研究課題/領域番号 |
19K01000
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
山下 須美礼 帝京大学, 文学部, 准教授 (90523267)
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研究分担者 |
北原 かな子 青森中央学院大学, 看護学部, 教授 (80405943)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 近代化 / 東北 / ロシア / キリスト教 |
研究実績の概要 |
明治初期に日本のハリストス正教会がロシアに派遣した留学生に着目し、その影響と意義を地域社会の近代化という視点から考察しようとする本研究において、2020年度はロシアの公文書館等での調査を計画していたが、2019年度に引き続き、コロナ禍により実現できなかった。また、宮城県図書館等での国内調査も実施することができなかった。 そのため、2020年度は主に①松井寿郎、②源圭蔵、③金須嘉之進といった留学生個人やその派遣に関わった人々、そして彼らが属した個別教会や地域社会の状況について、これまでの研究を補足する形で史料調査を進めた。 具体的には、研究代表者の山下は、①の松井の父親で、③の金須とも関わりの深い人物が残した日記の翻刻および分析を行い、彼らの留学が実現にいたる背景としての人間関係、交友関係、教育への姿勢、経済的状況等の一端を明らかにしつつある。加えて、仙台を中心とする地域社会の近代化過程との連動性についても考察を進めている。また、正教会の機関誌である『教会報知』や『正教新報』等の悉皆調査を進めるなかで、ハリストス正教会として留学生たちの状況をいかに把握していたのか、そして彼らにどのような期待をしていたのか、といった点について、分析するための情報が集まりつつあるところである。 昨年来、ハリストス正教会からの留学生の特質を検討するうえで、東北やキリスト教という共通項をもった正教会以外から派遣された同時期の留学生の存在にも視野を広げているが、研究分担者の北原は、そういった観点から東北におけるプロテスタント宣教師の家族に関する調査を進め、「ルーシー・E. H. イングとHeathen Woman’s Friend-1870年代のメソジスト派アジア伝道における宣教師夫人の活動と貢献-」(『青森中央学院大学研究紀要』34号、2021年3月)として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年度、2020年度に予定していたロシアでの調査が、コロナ禍により実現できなかった。また2020年度は、宮城県図書館等での国内における資料調査、および研究協力者との対面による研究打ち合わせも、状況を考慮した結果、一度も実施することができなかった。モスクワの研究協力者とは頻繁に情報のやり取りをしているが、実地調査を補足するには不十分である。国内調査もままならないなか、手元の史料を中心に、出来る限りの調査・分析を進めているのが現状であり、研究には遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、ハリストス正教会からの留学生およびその周辺の状況について、史料の調査・分析を進める。それとともに、昨年度同様、東北やキリスト教という共通項を持った、正教会以外からの同時期の留学生、およびその周辺の動向についても調査を進める。 今後は、特に『家翁録』の翻刻および分析を終了させることと、『教会報知』・『正教新報』等から留学に関わる記事を抜き出すための悉皆調査に注力する。 また、ロシアの史料データベースも可能な限り活用し、ロシア国内の史料の調査・収集を試みる。 コロナ禍の状況を見極め、もし実施が可能となれば、国内の図書館等における調査を再開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、研究代表者と研究分担者の2名で予定していたロシアへの調査および国内での調査を断念せざるを得ず、その分の旅費として見積もっていた額が支出されなかったため。
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