研究課題/領域番号 |
19K01012
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
黒田 卓 東北大学, 国際文化研究科, 名誉教授 (70195593)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イラン / 近代史 / ムスリム知識人 / 旅行記史料 / グローバルヒストリー |
研究実績の概要 |
本研究課題は、19世紀から20世紀初めにかけてペルシア語で記された旅行記を基本史料に、ペルシア語を日常語とするイラン系知識人の近代性(モダニティ)に対する認識や表象のあり方が、18世紀後半からどのように変化をしてゆくのか、また日本をこの研究課題に取り込むことで、より広域に彼らと近代世界との遭遇の様態についての共時的な相違も併せて考察することにした。 今年度は新型コロナの感染が世界的には落ち着きをみせたものの、当初予定していたイランへの調査出張については、同国を取り巻く国際環境の悪化により見合わせざるを得なかった。そのため、集英社がシリーズで刊行している『アジア人物史』第9巻「激動の国家建設」に「近代イランにおける文人政治家とその一族 ―西と東と、王と民との狭間で」と題する90頁余りの、かなり長目の論考の完成と公表に焦点を絞った。 本論考は、ヘダーヤト家というテヘランの名門家系に生まれたメヘディーコリー・モフベロッサルタネという人物の評伝を詳述するとともに、彼がドイツを中心とするヨーロッパだけでなく、日露戦争前夜の日本にも到来し、そこで得た認識や理解を比較・咀嚼しつつ、立憲革命という大きな政治変動の中でいかにそうした経験や認識を活かしていったかを、彼の日本旅行を含む紀行文『メッカ旅行記』および浩瀚な自伝『回顧と危難』を導きの糸として克明に跡づけたものである。日本とイランの従来ほとんど知られていなかった関係の側面にも光を当て、その中で新しいいくつかの事実も掘り起こすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外出張はできなかったものの、本研究課題のいわば「まとめ」としてメヘディーコリー・ヘダーヤトに関する論考を完成させることができたので、計画通りとは言わないまでも、当初の目的からして研究の進捗はやや回復したと自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
イランでの図書・公文書などの文献調査および収集については、2024年夏から秋にかけ、中東をめぐる情勢や同国の動向を注視しながら、適切に計画を立てて行うことにしたい。またアフガニスタンのヘラートをめぐるイギリスとの交渉に19世紀半ばに英国へ派遣された人物の旅行記の読解にも着手したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたイランでの文献調査を目的とした海外出張が、中東を取り巻く情勢の急な悪化のために困難になり、再々延長を申請せざるを得なかった。
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