研究課題/領域番号 |
19K01013
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡 洋樹 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (00223991)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | モンゴル / 清朝 / 駐防官 / 遊牧民統治 / 中国 |
研究実績の概要 |
清朝による外藩モンゴル諸盟旗統治において、清朝がモンゴル及びその周辺に配置した駐防官衙が果たした役割及び旗印務処の行政事務処理の状況を明らかにするため、清代の盟旗档案(公文書)の調査を引きつづき実施した。コロナ禍のため、当初予定していた東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所所蔵の黒龍江将軍衙門档案マイクロフィルムの調査は断念し、近年中国から刊行された档案資料集の収集と内容の精査に努めた。とくに内モンゴル西部のオルドス諸旗、アラシャ旗については大量の文書が公刊されている。昨年度は、オルドス・ハンギン旗档案(『杭錦旗札薩克衙門档案』)を入手し、これを中心に収録文書の内容の把握と関連档案の抽出を行った。その結果、モンゴル盟旗が清朝理藩院・駐防官衙あるいは隣接旗とやりとりした文書とその内容を簡略に記録したtobyugと呼ばれる档冊を発見した。この档冊は、同治元年から同治10年までの十年間に同旗印務処が旗外から受け取った文書を列記した档冊であり、旗と外部の諸官衙との文書によるやりとりを一覧することができる。現在テキストの転写と内容の把握を進めている。同治年間は、陝西省・甘粛省で発生した回民の反乱が内モンゴル西部にも及び、軍事事務に関わる文書のやりとりが頻繁に行われていた。いわば緊急時にあたる時期であるが、それだけに、反乱鎮圧にあたる清軍の将軍やオルドス周辺の駐防官衙とのやりとりがどのようになされたのかを伺うことができる。また軍務に関わりのない通常事務の内容や文書往来の頻度などを知ることができる。同時に、清朝のモンゴル統治行政の特質を理解するための基礎作業として、17世紀における清朝による外藩統治の様態を、北元期から清代への流れの中で検討する作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初「黒龍江将軍衙門档案」の調査を計画に含めていたが、2020年3月に数日間の調査を行ったものの、以後コロナ禍で調査が遂行できなくなった。そこで当初の計画の内、刊行された档案史料を用いた研究を重点的に行うこととした。刊行史料は概ね入手でき、その内容の解読を進めた結果、「杭錦旗札薩克衙門档案」が、収録文書が多く、雍正期から光緒期にわたることから、本研究の遂行に有用であることが判明した。とくに同治年間のtobyugと呼ばれる来文とその内容を簡略に記した档冊を発見したことは、本課題の解明に有意義であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在進めているオルドス・ハンギン旗のtobyugの内容分析に注力しつつ、旗と清朝理藩院、駐防官衙の事務連絡の様態とその特徴を明らかにしていきたい。従って研究の対象は、内モンゴル西部オルドス諸旗と周辺の駐防官衙(綏遠城将軍、帰化城副都統、寧夏・神木の理藩院司員など)に絞り込むことになる。また「黒龍江将軍衙門档案」については、今年度後半に調査が可能になれば、調査を行い、上記官衙と比較できるような史料を得ることを考える。ただ、黒龍江将軍自体の盟旗統治上の機能については、今後の課題とせざるをえないだろう。
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