研究課題/領域番号 |
19K01014
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古井 龍介 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (60511483)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 南アジア / 中世 / ベンガル / 碑文 / 銅板文書 |
研究実績の概要 |
今年度はまず、12世紀ベンガルにおいて、海外に居住する親族を通して国際的商業ネットワークと結びついたムスリムの従属支配者が、在地のヴァルマン朝の王に仕え、自身に特権として与えられた市場からの徴税権の施与により、マドラサと思しき宗教組織を援助していた可能性を示す石碑を校訂・公表した。加えて、自らが東京大学東洋文化研究所での開催を主導した国際学会において、銅板文書をはじめとする碑文から読み取られる、中世初期ベンガルの仏教僧院の組織的発展と、それらが置かれた社会的文脈について報告を行った。 インドへも渡航し、コルカタおよびデリーにて研究発表および調査を行った。まずコルカタでは、カルカッタ大学で開催された国際セミナーにて近刊著の内容および今後の課題について発表を行うとともに、アジア協会にて所蔵銅板文書のデジタル写真を取得し、またベンガル文学協会で所蔵銅板文書の現状を確認した。デリーでは国立博物館にて未公表パーラ朝銅板文書二点の所蔵を確認し、それらを調査した。 以上に加え、現在進行中のヨーロッパ研究評議会プロジェクトDHARMA「「ヒンドゥー」苦行のドメスティケーションと南・東南アジアの宗教的形成」のメンバーとして、ベルリンでのワークショップに参加し、オンライン碑文データベース構築に関わる技術講習を受けるとともに、バングラデシュにて個人蔵およびバングラデシュ国立博物館・ヴァレーンドラ研究博物館・マハースターン遺跡博物館所蔵の碑文・銅板文書の調査・撮影を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、重要碑文の校訂を進める一方で、ヨーロッパ研究評議会プロジェクトへの参加を通して、碑文テクストの校訂およびデータベース構築に関わる技術を習得し、プロジェクトメンバーと協力してベンガル碑文データベースの準備を進めており、当研究プロジェクトの目的の一つである碑文集成編纂の基盤を構築しつつある。このような状況に鑑みて、プロジェクトはおおむね順調に進展しているものと結論づけられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度収集したものも含む画像データをもとに、未公表碑文の解読・校訂および公表済み碑文の再校訂を行いつつ、同時に碑文データベース構築作業も進める。それらの成果は論文およびオンライン参加も含む国際ワークショップでの報告として公表するものとする。また、状況が許せばインドで調査を行い、改めて新出銅板文書を調査するとともに、それらの校訂・公表に必要な画像データを収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたバングラデシュにおける調査について、現在研究協力者として参加しているヨーロッパ研究評議会プロジェクトから旅費の支給を得て、他のメンバーと合同で行うことができたため、その分の旅費支出が不要となった。
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