研究課題/領域番号 |
19K01014
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古井 龍介 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (60511483)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 南アジア / 中世 / ベンガル / 碑文 / 銅板文書 |
研究実績の概要 |
本年度は海外渡航による現地調査が不可能であったこともあり、すでに撮影した、あるいは写真を取得した碑文・銅板文書の校訂および再校訂に専念した。具体的には、研究協力者として参加しているヨーロッパ研究評議会プロジェクトDHARMA「「ヒンドゥー」苦行のドメスティケーションと南・東南アジアの宗教的形成」における碑文データベース構築作業の一環として、4点のパーラ朝銅板文書、1点の後期デーヴァ朝鋼板文書および3点のパーラ朝期の石碑を校訂・再校訂してXMLファイルとしてエンコードした。それらのうち、マダナパーラのマナハリ銅板文書については、校訂テクストと翻訳に加えて内容を分析した論文を執筆し、投稿準備を進めた。また、7世紀の王シャシャーンカの治世に発行された新出銅板文書をArlo Griffiths氏と共同で解読・研究し、その成果を共著論文として公表した。同王に言及したものとしては5枚目となる当銅板文書はクムダヴィッリカーという名の村落の購入と11名のカーンヴァ学派のブラーフマナへの施与を記録した土地売買文書であり、他の同時代史料に見られないナウマハッタラという地位を有する人物が、当該村落からの収入の享受者として土地売却許可手続きに関与している点および代価を計算する貨幣単位としてカールシャーパナが用いられている点に特徴が認められる。Griffiths氏とは、現在のチッタゴンに相当するハリケーラを8世紀に支配した王デーヴァーティデーヴァの新出銅板文書および同王の治世に言及する青銅壷銘についても共同で解読および研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの世界的流行により、当初予定していたインドでの現地調査を行うことができず、また、インドでの感染状況の悪化により、昨年度に所在を確認し、写真提供を要請していた新出銅板文書のデジタル写真取得手続きが進まなかったため、新出史料の探索・取得に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、取得済み画像データをもとに、未公表碑文の解読・校訂および公表済み碑文の再校訂を行いつつ、同時に碑文データベース構築作業を進める。作業においてはヨーロッパ研究評議会プロジェクトのメンバーを中心とする海外の研究者とも協議しつつ進め、質的向上にも努める。今年度も現地調査に困難が予想されるが、年度後半に可能となる状況を期待して、準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの世界的流行により、当初予定していたインドでの現地調査を行うことができなかったため次年度使用額が生じた。しばらくは日本での研究遂行が中心となるので、そのための資料等の購入に充てるとともに、年度後半に状況が改善されるようであれば延期していたインドでの現地調査を行うための旅費として支出するものとする。
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