研究課題/領域番号 |
19K01017
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三田 昌彦 名古屋大学, 人文学研究科, 助教 (30262827)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 14世紀 / インド / ユーラシア史 / 危機 / ラージプート / 国家形成 / 気候変動 / 開発 |
研究実績の概要 |
本年度も引き続きコロナ禍の影響でラージャスターンでのフィールド・ワークは断念し、国内での研究活動に限定することになった。 一つは昨年度の研究の継続である。昨年度まで進めてきた変動期以降(14世紀後半以降)の銅板施与(寄進)勅書の様式に関する研究をまとめ、東洋文庫インド班の研究会において口頭報告し、さらにそれを文章化して東洋文庫インド班に提出した(2023年度刊行予定)。そこにおいて、14世紀においてその様式を大きく変えるとともに、銅板勅書自体の国家における意味が国家システムの変化とともに大きく変わったことが明らかになった。 もう一つはこうした14世紀の変動が、ユーラシア規模の変動、とりわけ内陸アジアの動向といかに連動していたかを示す研究である。杉山科研の研究会では「南アジア中世史と乾燥ユーラシア世界——他地域との比較に向けて」を報告し、南アジア世界における10・11世紀および14世紀の変動が、乾燥中央ユーラシア世界の動向と密接に結びついていた点について、内陸アジア史、西アジア史、中国史の研究者たちと討論を行った。加えて14世紀の変動以前の南アジアにおける国家形成の長期的な特質について、論文「南アジアにおける国家形成の諸段階」を刊行した。 またHamilton CollegeのAbhishek Singh Amar氏を名古屋大学に迎え、“Reimagining the Buddhist Landscape of Ancient Rajagriha/Rajgir”と題する講演を、久間泰賢氏(三重大学)とともに共催した。そこでは、現在のインドにおける仏教遺跡の観光上の再利用が、偏った仏教史理解に基づいていると指摘され、本研究が取り上げている変動期を含む中世初期から後期にかけての歴史研究の重要性が再確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のもとラージャスターン調査ができていないため、刻文調査が滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はインドでの刻文調査が行える見込みである。可能な限り関係刻文の調査を実施し、刻文史料のカテゴリ別(銅板文書、寺院刻文、灌漑施設刻文、記念碑など)データ整理を完了させる。 15-17世紀銅板勅書の書式分析の英文論文の刊行が遅れているが、今年度にはその刊行を目指す。 すでにこれまで、当該プロジェクトの大まかな研究結果ができつつあるので、その最終的な整理を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も予定していたインド調査がコロナ禍のために実施できなくなったその金額がここに現れている。しかし、2023年度については現段階ではインド調査ができる見込みである。可能な限りインドでも刻文調査を行う予定である。
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