研究課題/領域番号 |
19K01018
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田口 宏二朗 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50362637)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 不動産登記 / 南京国民政府 / 南京市 / 制度 |
研究実績の概要 |
本年度は、前半期においては制度論構築の一環として、中国史上の経済統計に関する作業を集中して行った。現在、統計数値とモデルの妥当性について、各方面に検証を依頼中である。 8月から9月にかけては、台北において史料調査を行った。中国国民党文化伝播委員会党史館(党史館)・国史館・台湾大学図書館において、計14日間、1920~1930年代の南京の登記政策・国民党中央での議論に関する一次史料を収集した。11月には、京都大学人文科学研究所の共同研究班「転換期中国における社会経済制度」研究班研究会にて、「登記の時代(2)――1930年代、南京土地登記を阻むもの」と題する研究報告を行い、活発な意見交換を経て貴重な意見を得ることができた。なお、当該報告で明らかにした知見は、修正を加えたうえで400字詰め原稿用紙200枚分程度の日本語論考として、2020年度中に同研究所から刊行される論文集に収載される予定である。 さらに、民国期南京市内の外国人土地「所有」をめぐる中華民国外交部・南京市政府、および英国外務省・南京領事間のやりとりに関して多元法制という角度から行った考察を、「南京の英国人」と題した日本語論考として、既に別の論文集に投稿したが、目下のところ書名・出版社について編者より連絡がなく、刊行時期は不明である。加えて、中国の長期的国制を制度論の角度から叙述した英語論考("'Sinic' charter states")も、まだ刊行の目途がついていない。 なお、中国農業をめぐって制度の角度から触れた短文は、『論点・東洋史学』(ミネルヴァ書房)に収録されたうえで2020年度中に刊行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題申請時においてはまだ予期していなかったことだが、本テーマに関する中央政府レベルでの議論が党史館での档案調査によって明らかになったのは大きな成果だった。その結果として、申請書に記述した英国・米国での史料調査はいったん後回しにして、国民党中央執行委員会政治会議における議論とその背景・意味合いを探る作業に注力することができた。これまで収集してきた政府刊行物や新聞史料に加え、一種の政治過程論について突っ込んだ分析を進めることで、本研究課題の最終的目的である一定の制度モデル定立にむけて、重要な実証的基盤を付加することが可能になると考えるゆえんである。
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今後の研究の推進方策 |
以上の進捗状況、および新型コロナ流行により欧米方面にて史料調査を行う可能性が下がった現況に鑑みて、当面は手持ちの史料の読解および先行研究の収集・消化に努めることとする。もし可能ならば、中国大陸(南京・上海)・台北での史料収集を再開することにしたい(この道が閉ざされたばあいは、報刊資料のデータベース購入などを検討することとする)。
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次年度使用額が生じた理由 |
2-3月に予定していた台北・南京での史料調査が、新型コロナ流行にともなう渡航自粛によって不可能になった。この残額は、当面電子ジャーナル・データベースの購入に廻し、国内(自宅)での史料収集活動を円滑に進めるための原資としたい。
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