研究課題/領域番号 |
19K01018
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田口 宏二朗 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50362637)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 民国期 / 中国 / 南京 / 土地登記 / 制度 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績は以下の通りである。 本年度は、新型コロナの流行により、国外での活動が一切叶わなかった。そこで、台湾や中国大陸における史料収集は一切断念し、1)昨年まで収集してきた史料の分析、2)分析を方向づけるための理論的枠組みの検討、という二方面の作業に注力せざるを得なかった。 1)については、台湾国史館・中国国民党党史室などの収蔵機関から集めた档案・会議録を軸に、当時の登記事業をめぐる国民党内の議論を追った。さらに『申報』『中央日報』等の代表的な報刊史料や政府広報にみられる断片的記事をも交えつつ、1934年段階までの政策的な紆余曲折を明らかにした。その曲折過程は、単なる党内での派閥争いというよりは、むしろ党内における複数のプロジェクト間の不整合性に起因するものであるとの説明が可能であるむね、明らかにした。以上を、「登記の時代(2)」と題した論考として発表した。 2)については、制度論構築の一環として、中国における数値史料を集積した国民勘定の推計について、谷沢弘毅氏の方法論を使いつつ統計系列を再構築した。これにより、近年のA.マディソンやS.ブロードベリーらの作業を修正するとともに、さらに省別のGDP推計を行う作業に向けての暫定的なプラットフォームを築くことを試みた。その中間作業報告として、上海交通大学との共同シンポジウムで報告、曹樹基氏や邱澎生氏といった同大学の数量史・法制史研究者と意見を交換することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の通り、中国大陸・台湾において予定されていた史料調査を行い得なかった要因が大きい。その結果、当初計画していた民国南京市内における社会的諸集団の角逐について解像度の高い像を再構成することができないでいる。具体的には、本年度刊行した「登記の時代(2)」で扱った牙行・地販の詳細、当時における抵押登記と抵押証券発行の関わり、そして何より南京登記文書の継続的調査はまったくかなわなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1)南京や台北の諸機関収蔵の史料を収集する作業の代替として、申請者の本務校である大阪大学にて本年あらたに購入した『申報』DB、およびNorth China Herald等の英字新聞検索システムを積極的に使用し、土地登記をめぐる当時の社会状況について、南京以外の都市にも若干対象を拡大して史料の収集と分析を進める。 2)同時に、本研究のもう一つの柱である、制度分析の理論モデルについて、歴史統計学の成果も交えつつ、現在の作業を継続することにしたい。 3)また、研究成果の発信についても、Web会議システムを活用して極力行うものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ流行が継続し、当初予定していた南京・台北およびロンドンでの史料調査が実行不能となってしまった。予定変更に伴い、図書購入の配分を増大したものの、旅費・人件費の執行は行いえなかった。本年も当面は旅費使用を見合さざるを得ないが、次年度、状況が改善すれば上記の史料調査、およびパリ開催予定の国際経済史学会(報告は決定済み)参加費用に充当したい。
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