期間全体を通じて、中華民国期南京の不動産政策に関する分析を進めた。とりわけ、台湾の国史館にて収蔵される1930年代の都市不動産に関する土地所有権登記申請書および関連文書(いわゆる南京土地登記文書)、および国民党党史館にて収蔵される議事録等の収集と分析を進めた。その成果としては、当時の南京において土地所有権登記事業が行われる経済史・社会史・政治史的文脈について、口頭報告および文章化された論考を通じて、和文・英文・中文での発信を行った。またその過程で、中国・台湾・米国・インドなどの他国の研究者、そしてインド史・日本史など、他分野の研究者との交流を深めることができたのも、大きな収穫であった。 ただし、2020年度~2021年度にかけて、新型コロナ肺炎流行により各国における出入国管理が厳格化され、海外渡航が大きく規制されることとなった。このため、当初の計画における台湾・中国大陸・イギリスなどでの史料収集や研究報告といった作業は、著しく制約されざるをえなかった(2022年におけるパリ開催のWEHCでの報告、2023年におけるインドでの報告に限定せざるをえなかった)。このため2023年度において、最終年度である2022年度から基金を繰り越して研究を継続した。 なお2023年度においては、春期休暇の期間を利用し、台湾の国史館にて、総計数十件に上る南京登記文書に対して、研究協力者の助力を得つつ、閲覧・撮影(数千点のjpegデータ)を行うことができた。
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