研究課題
基盤研究(C)
本研究においては、1930年代の南京の土地登記事業に関する文献史料(いわゆる「南京土地登記文書」)を数多く収集し、これに基づいて論考の公刊・口頭報告(日本語・中国語・英語)を行うことができた。その結果として明らかになった論点を端的にいえば、第1に、当時の登記事業が20世紀前半期における流動的な政治状況のなかで実施されたこと、第2に、にもかかわらず、南京市民の様子見(「観望」)という均衡状態が、南京市政府における登記ルーティーンの微調整によって大きく変化したことが明らかになった。
中国経済史
本期間の研究を通じて、旧来ほとんど分析の加えられることのなかった1930年代の南京における土地登記に関する知見を明らかにすることができた。これにより、既往の土地制度史研究における中国土地制度の評価、ならびに現在の経済史研究における制度論(とりわけ土地所有権に関する新制度派による「西洋中心的」な議論)を大きく刷新する可能性が拓かれた。今後は、日本史・西洋史・インド史など広範な研究分野との対話を通じ、本研究における知見を、より汎通的なものにするべく彫琢する予定である。