研究課題/領域番号 |
19K01020
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
伊藤 正彦 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (50253711)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 魚鱗図冊 / 記載様式 / 地理的空間 / 事産把握 / 紙背文書 / 小黄冊 |
研究実績の概要 |
本研究は,明清期徽州における①魚鱗図冊の様式,②魚鱗図冊の記載情報にもとづく明代の里=図の地理的空間把握,③魚鱗図冊の事産(所有地)把握内容が変化する具体的なあり方を追究することを通して,魚鱗図冊の新たな性格理解を試みるものである。 ②魚鱗図冊の記載情報にもとづく明代の里=図の地理的空間把握,③魚鱗図冊の事産(所有地)把握内容が変化する具体的なあり方を探る素材として,中国歴史博物館蔵『万暦9年歙県16都2図商字魚鱗清冊』と中国社会科学院古代史研究所蔵『明洪武18年歙県16都3保万字清冊分庄』の記載情報のデータ入力を済ませているが,前年度と同じくCOVID-19の感染拡大のために中国へ渡航することができず,現地調査―魚鱗図冊が記載する土名(事産の所在地)の聞き取り調査を実施することはできなかった。また,中国での資料閲覧・調査が不可能であるため,徽州府休寧県の万暦9年丈量の魚鱗図冊の記載様式を探る作業も着手することができなかった。こうした状況を打開すべく研究協力者である黄忠金氏(曁南大学文学院歴史学系副教授)を日本学術振興会「外国人招へい研究者(短期)」によって招へいし,共同研究を進めることを計画したが,これもオミクロン株拡大による入国停止措置のために延期せざるを得なかった。 しかし,代わる作業として,静嘉堂文庫蔵公文紙印本『漢書』残本の紙背の「小黄冊」の閲覧・撮影を行なった。近年,洪武14年(1381)正月の里甲制施行に先行して実施された「小黄冊図の法」で作製された「小黄冊」の現物が中国で発見されたが,静嘉堂文庫蔵『漢書』残本の「小黄冊」はこれと関連するものであり,魚鱗図冊も含めて明初の里甲制体制の成立過程を探るうえでの重要な資料である。 なお,2021年9月25日にリモートで開催された第5回「徽州文書与中国史研究」学術研討会に参加し,「朱学源戸之属性考」を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の感染拡大で中国への渡航が不可能であったため,徽州府休寧県の万暦9年丈量の魚鱗図冊の記載様式の調査,中国歴史博物館蔵『万暦9年歙県16都2図商字魚鱗清冊』と中国社会科学院歴史研究所蔵『明洪武18年歙県16都3保万字清冊分庄』の舞台である歙県西溪南での土名(事産の所在地)の現地に着手できていない。 しかし,歙県の魚鱗図冊の記載情報のデータ入力を済ませ,里=図の地理的空間把握,魚鱗図冊の事産把握内容の変化を探る準備は整っており,また,静嘉堂文庫蔵公文紙印本『漢書』残本の紙背の「小黄冊」の閲覧・撮影も終え,研究協力者の黄忠金氏との共同研究を進める準備も整えている。
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今後の研究の推進方策 |
中国への渡航が可能になり次第,中国の大学・図書館・博物館等での資料閲覧,現地調査を実施し,徽州府休寧県の万暦9年丈量の魚鱗図冊の記載様式を網羅的に明らかにする作業,歙県西溪南での現地調査をもとに明代の里=図の地理的空間を把握する作業に着手したい。中国への渡航条件が改善しない場合は,中国の研究協力者(中国社会科学院古代史研究所の欒成顕氏,南開大学の卞利氏,曁南大学の黄忠鑫氏ら)の協力を仰いで資料収集と現地調査を行なうようにしたい。 なお,魚鱗図冊の事産把握内容の変化を探る作業については,令和3年度日本学術振興会「外国人招へい研究者(短期)」で研究協力者である黄忠金氏を2022年6月3日~8月1日の期間招へいし,共同研究を進める計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大で中国の大学・図書館・博物館等での資料閲覧,現地調査を行なうことができなかったため。中国への渡航が可能になり次第,資料閲覧,現地調査を実施するが,中国への渡航条件が改善しない場合は,中国の研究協力者(中国社会科学院古代史研究所の欒成顕氏,南開大学の卞利氏,曁南大学の黄忠金氏ら)に代替措置の協力を仰ぐようにしたい。
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