本年度は、本来昨年度に終了予定であった研究期間を一年間延長したため、本研究を総括すべき最終年度になった。 本年度は、コロナ禍による水際対策が緩和されたことにより、モンゴル国における国際会議で研究成果を報告する機会を得た。本報告では、Dispute between Russia and China over customs duties in Mongolia: What were the customs duties in Mongolia in the early 20th century?と題し、露中間の外交交渉においてモンゴルの関税がいかに議論されていたのかを考察した。関税が国家財政の主要財源であったモンゴル国にとって、中国商人からの関税徴収は死活問題であったが、モンゴルの宗主国でありモンゴルを中国領の一部であると主張する中国政府はロシア人と同等の無関税特権を要求していた。一方、ロシア政府はロシア商業のライバルである中国商人に負担を強いつつも、モンゴルにおけるロシアの特権が他の列強より著しく優位にならないよう配慮することにより、列強からの批判を抑えてモンゴルにおける特権の維持を図った。そのため、ロシア政府はモンゴルを中国領の一部であると主張する中国側の見解を逆手にとり、モンゴルにおける関税を中国国内において徴収される釐金と同様であると主張することにより中国の反論を封じ、モンゴルでの関税徴収を認めさせることに成功したのであった。本報告の内容は、会議の論文集に収められ、年度内に刊行された。 本研究では、モンゴル国における関税について、制度と実態の全体像を描き出すことを目指し、具体的な関税徴収額や制度の改定の変遷などについて明らかにできたことは大きな成果であったと考えている。
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