研究課題/領域番号 |
19K01026
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
江川 ひかり 明治大学, 文学部, 専任教授 (70319490)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オスマン演劇 / 祝祭 / 暦 / 大衆文化 / イスタンブル / オスマン帝国 / ラマダン(断食月) / カント(歌) |
研究実績の概要 |
2021年度は本科研の3年目、最終年を迎えた。しかしながら新型コロナ感染症によりトルコ共和国への渡航が困難となったため、最終成果となる日本語書籍に向けた個別研究を研究代表者江川ひかり、連携研究者永田雄三および奥美穂子がそれぞれ鋭意進めた。 研究実績は第一に、内部研究会をオンラインにて2021年8月19日に、対面にて11月25日および2022年3月20日に開催し、進捗状況の情報交換をおこなった。 第二に、本科研の研究成果として江川・永田の共著によるトルコ語版研究書Bir Kentin Toplumsal Tarihi Acisindan Osmanli'nin Son Doneminde Istanbul'da Tiyatro ve Cevresi(『都市社会史の視点からみたオスマン朝末期イスタンブルの演劇空間』)が6月30日にイスタンブルのデルギャーフ出版から公刊された。出版直後からSNSで紹介され、トルコの日刊紙『ヒュリイェト』(7月25日、イルベル・オルタイル執筆)でも書評が掲載された。さらに同出版社のウェブ誌にて永田・江川へのインタヴュー記事も掲載(2022年2月)されるなど、トルコの出版界でも話題となった。 第三に、江川は『明大アジア史論集』26号にて、1900年にイスタンブルでオスマン幻想劇団によって上演された公演ポスターの史料紹介をおこなった。 第四に、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所所蔵オスマン演劇ポスターコレクションの解読成果を発信してきたデータベース(https://osmanlitiyatro.aa-ken.jp/)の内容を更新し、各ポスターの閲覧状況を把握するためのシステム改善をおこなった。 なお、新型コロナウイルスの感染状況からトルコへの研究出張が三年間かなわず、研究にやや遅れが生じていることから、一年間の延長申請をおこない、承認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症が依然として蔓延するなか、2021年度も、連携研究者奥美穂子によるトルコ共和国における史料収集および現地調査が実現に到らなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
延長申請後の2022年度が4年目の最終年度となる。新型コロナウイルス感染症は依然として終息する気配はないが、年度の後半に、トルコ共和国への研究出張が可能になるようであれば、連携研究者奥美穂子が出張する。ただし海外出張ができない可能性も高いため、現時点で入手している貴重な大統領府オスマン古文書館所蔵史料・演劇ポスター史料および関連参考文献類を十分に活用することによって、「帝国と大衆とを結ぶ装置」としての近代演劇文化、さらには演劇空間としてのイスタンブル都市社会に関する日本語書籍の出版を目指したい。そのためには、研究代表者および連携研究者がそれぞれ進めてきた個別研究をまとめ、公開研究会を開催し、議論を深めた上で、研究成果報告書のとりまとめを鋭意進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染症の拡大によって当初予定していたトルコ共和国への研究出張を延期せざるを得ず、研究成果報告書も完成できなかったためである。 2022年度は、新型コロナウイルス感染症の状況を見極めつつ、トルコ共和国への研究出張が可能となった場合には、連携研究者奥美穂子が史料収集と現地調査をおこなう。加えて、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所のウェブサイトにおける日本語ページを増設する。最後に、本研究の研究成果報告書を冊子体でとりまとめる予定である。
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備考 |
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所(AA研)情報資源利用研究センター(IRC)のウェブサイトにおいて、AA研所蔵170点の演劇ポスター・プログラム画像が、江川が作成した「劇団別基本表」とともにデータベース化され、公開されている。
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