研究課題/領域番号 |
19K01027
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研究機関 | 公益財団法人古代学協会 |
研究代表者 |
飯田 祥子 公益財団法人古代学協会, その他部局等, 客員研究員 (30769211)
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研究分担者 |
角谷 常子 奈良大学, 文学部, 教授 (00280032)
鷲尾 祐子 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (60642345)
高村 武幸 明治大学, 文学部, 専任教授 (90571547)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中国古代史 / 五一広場東漢簡牘 / 出土文字資料 / 後漢 / 上行文書 / 移住 / 冊書 / 臨湘県 |
研究実績の概要 |
2020年4月に『五一廣場東漢簡牘(参)(肆)』が出版された。19年出版の『同(壱)(弐)』とあわせて、研究課題の主対象となる史料群は1800点弱公開された。引き続き『壱』以降の書籍を底本として研究に取り組んでいる。テキストデータに基づき、データベースを追加拡充した。また固有名詞(地名・人名)索引を作成し、冊書・関連簡牘の情報を整理した(データベース等は輪読会参加者と共有している)。 輪読会はオンライン開催に変更した。月に2・3回程度実施可能となり、継続的に議論しやすくなった。輪読の成果は五一廣場東漢簡牘研究會「長沙五一廣場東漢簡牘譯注稿(一)~(四)暫定版」として、HP五一広場東漢簡牘研究会(https://goitinokai.jimdofree.com/)に公開した。現在「同(五)」公開準備を行っている。史料輪読以外にも、代表者・分担者・協力者の研究報告会を開催することができた。 代表者個人の成果として「五一広場東漢簡牘の上行文書に関する基礎的整理」(『龍谷史壇』151・152、2021)と題して、首尾が特定された文書に基づいて上行文書の文言や形態を整理した。五一広場東漢簡牘の読解に向けて見通しを付け、西北漢簡や呉簡との比較検討を可能にする点においても、当該史料の重要性を示すことができた。「五一廣場東漢簡牘③200-2、③200-5平行文書冊書復元、及び關連簡に關する覚書」(HP五一広場東漢簡牘研究会、2021年2月25日公開)は、平行文書本文としては現時点では唯一の首尾を特定したものである。また「五一広場東漢簡牘にみる人の移動と管理」(東京外国語大学AA研共同利用・共同研究課題「秦代地方県庁の日常に肉薄する―中国古代簡牘の横断領域的研究」)と題して口頭報告をおこなった。 この他に後漢初期の政治・制度に関する論考である「建武王公考」は、校正済みで刊行を待っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画を大きく変更せざるを得なかったが、計画を見直すことで、予期していない成果を得ることができた。計画変更の要因は2点である。 ①新型コロナ感染症対応の影響で、東京・京都に参集しての輪読会を実施できなくなった。それに対して、輪読会をオンラインで実施することで、参集しての対面開催よりも、回数としては安定・継続して実施することが可能になった。また自宅等から参加することで、手元の資料が活用しやすくなったことの意義も大きい。 ②代表者が所属機関を移ったために、研究環境が大きくかわった。ただし新たな所属機関の協力で、研究成果を公開するためのHPを開設することができた。日本ではWeb上で公開した研究成果は、正当に評価されないとの懸念もあるが、本研究のように基礎的な成果を積み重ねる必要のある課題にとって、学会誌や紀要等の媒体では、分量的な問題から成果を公開しにくい。またレポジトリ等の対応が遅れている媒体を利用することは、公開の機会を阻むことになる。本研究は独自のHPで訳注稿および、「五一廣場東漢簡牘③200-2、③200-5平行文書冊書復元、及び關連簡に關する覚書」を公開したが、これは制約を避け広く成果が利用されるための試みである。 19年度に検討課題としていた、後漢中期の人口の移動と把握に関してはすでに論考をまとめ、公表を準備している。課題としては想定していなかった文書様式について、史料と先行研究の整理から、一定の論考をまとめる必要があると判断し、「五一広場東漢簡牘の上行文書に関する基礎的整理」を公表した。
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今後の研究の推進方策 |
①今年度内に『五一広場東漢簡牘』の五・六巻が刊行されることが期待される。刊行されしだい入手して、データベース等の拡充を図る。 ②当面、輪読会を対面で実施するのは困難であると予想されるので、オンライン開催を続ける。またオンライン開催であることを活かして、新たな参加者を募り、検討の多角化を図りたい。 ③今年度の前半期には五一広場東漢簡牘のうち第一層出土簡の輪読を終えることができると予想される。HP公開済みの「訳注稿・暫定版」とあわせて、第一層の確定稿を作成する。レポジトリに対応している学会誌に投稿して公表する方針である。 ④当該史料について、現時点では竹簡の検討が不十分である。20年度には木簡の上行文書の書式について整理することができたので、これを手がかりとして竹簡の検討を行う。 ⑤後漢王朝中期の社会・政策等については、司法と時令思想に関わる検討を行う方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
輪読会をオンライン開催としたため、移動にともなう旅費が支出されなかったためである。 残金は書籍の購入に使用することを計画している。今後も図書館等の利用が制限される可能性がある。研究協力者も含め、史料書籍のアクセスに支障のないよう、環境を整える必要がある。
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