研究課題/領域番号 |
19K01028
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
毛利 英介 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (10633662)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 三朝北盟会編 / 金 / 契丹 / 遼 / 北宋 |
研究実績の概要 |
まず雑誌『中国史学』上に「10-13世紀東アジアAsia国際関係史に関する随想」と題する文章を発表したことがある。この文章の論点は、ニコラス・タケット氏の著書の内容紹介や、趙翼『二十二史箚記』を代表例とする清朝考証学の成果が今なお有する学術的価値の確認など複数にわたり、それぞれに本課題と関連を有する。そのなかで特に課題と密接に関係する箇所として、『三朝北盟会編』について論じた部分がある。具体的内容には、従来は同書の研究に当たって清末の刊本が主に使用されてきたが近年複数の明鈔本の影印出版が行われたことや更に北京・台北・京都で明清の鈔本の電子画像化とオンラインでの公開が進みつつあることによる版本状況の劇的な変化の紹介や、北京大学歴史学系の故劉浦江教授門下の研究者たちの『三朝北盟会編』に関連する研究の重要性について日本の学界に向けて注意を喚起したことなどがある。 また東洋大学主催のシンポジウムにおいて、山根直生氏の報告に対してコメントを行い、これは冊子『歴史資料と中国華北地域ー農耕・遊牧の交錯とその影響ー 』上において文章化した。短文だが、山根氏の報告を踏まえつつ、本研究の背景である遼宋関係上の「国境」の在り方について新たな観点から論じた部分がある。 その他、当初の研究計画における主要な研究対象史料の一つである「宣和乙巳奉使行程録」について、『三朝北盟会編』のうち袁本に収録されるバージョンと『靖康稗史』に収録されるバージョンについて比較を行い、その結果は現在リサーチマップ上に公表している。端的に結論を印象として言えば、両者は非常に近似するという感触を得た。このことが意味することは重大であると考えるが、それについてはこの作業の基礎の上に引き続き研究を進めていく予定である。そしてそれは、上記の北京における研究動向とも直接・間接に関連するものとなろう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
夏季を念頭に想定していた中国における海外調査は、折からのコロナ禍により行うことが出来なかった。ただし、これは不可抗力であると考える。 それ以外に関しては、研究を粛々と進行させており、全体として「やや遅れている」と評価を下すものである。
|
今後の研究の推進方策 |
手元の文献に基づく研究は引き続き粛々と行っていくが、海外調査については2021年度においても実施可能かどうかは不明であり、現状ではやや悲観的である。そのため、研究期間を一年間延長して実施することを想定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、想定していた海外調査が実行できなかったため生じたものである。これについては、次年度に海外調査を行うことで使用する予定であるが、もしそれが不可能な場合は研究期間を延長することを視野に入れる。
|