前年度よりは状況が緩和しつつも引き続き新型コロナウイルス感染症の影響により国際的な移動に制約があったため、当該年度も海外渡航は行わなかった。ただし対面での学会・研究会が多くの場合いわゆるハイブリッド形式で復活するなか、毛利も今年度は年度末に金沢に国内出張を行い「契丹文資料における渤海国・東丹国の用例の紹介-遼代の渤海認識の検討のために-」と題して久しぶりに現地での口頭発表を行い直接関係者の反応に接することが出来た。ただしこれは出張経費自体は別の科研課題からの支出によるものではある。 ただし以上のように出張はあまり行うことが出来なかったものの、その分テキストの精査とそれに基づく研究成果の発表に注力することが出来たとは言える。例えば「文瀾閣本『三朝北盟会編』初探」が特にそれに該当する。そのほか、『三朝北盟会編』に深く関連を有する史料である『靖康稗史』の伝来についての考察結果も「『靖康稗史』の「出現」についてー『謝家福書信集』所収史料の紹介ー」として文章化し公表したほか、同史料に対するテキスト分析についても既に「『靖康稗史』偽書説ー本文の検討を踏まえて」と題して口頭発表を行った上でこれを文章化した論文も準備しつつある。 以上が当該年度に関する実績の概要であるが、研究期間全体を通じても、当初想定した海外調査は新型コロナウイルス感染症拡大以降は行うことが出来ず計画通りに実施することは出来なかったが、その代替としてテキストの精査とそれに基づく成果を十分に挙げることが出来たと考える。よって全体的評価としては、当初想定したのと同程度かそれ以上の成果を挙げたものと考える。
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