本研究課題では南宋代成立の史書『三朝北盟会編』を主たる研究対象とした。同書は北宋末から南宋初における対金関係を叙述しており、かねて当該時期の研究における根本史料と評価されて来た。だが扱いに難しさがあることから、従来十分に使用されているとは言いづらい。本研究ではかかる特徴を有する『三朝北盟会編』に対して、近年の史料状況の変化を踏まえつつ関連の基礎的検討を行った。これは今後の同書の利用、延いては宋・遼・金代史への貢献として学術的意義を有するほか、同書が近代において刊行・流通する際の背景には近代中国のナショナリズムも存在することから、現代中国を見るための基礎的情報として一定の社会的意義も有する。
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