研究課題/領域番号 |
19K01029
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研究機関 | 小山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
長峰 博之 小山工業高等専門学校, 一般科, 准教授 (00825672)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジョチ朝(キプチャク・ハン国) / 後期ジョチ朝諸政権史料 / 歴史認識 / モンゴル帝国 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ジョチ朝(ジョチ・ウルス)の継承政権(後期ジョチ朝)において著された諸史料の分析により、それらからモンゴル帝国時代に関する歴史的知識を抽出すること、また、後代がいかにモンゴル帝国時代を認識していたか、チンギス家(ジョチ家)の権威がいかに保持され、あるいは変容したかを明らかにすることにある。引き続きの新型コロナウィルス流行のため計画していた写本調査を行うことができなかったため、入手済みの写本、資史料の調査を進めた。具体的には、17世紀末ヴォルガ・ウラル地方史料『ダフタリ・チンギズ・ナーマ』の4写本の分析を進め、そして後期ジョチ朝史料がその政権の正統性を主張する際に何を参照したのか、ジョチ朝再編をいかに認識していたのかについての考察を進めた。また、未実施の写本調査を遂行するため、計画の延長申請を行った。 報告「サライはどこに?:ジョチ・ウルスの都サライをめぐる近年の研究動向によせて」においては、ジョチ・ウルスの「都」サライの場所および新旧二つあったかどうかをめぐる議論を紹介・検討し、地図資料を含めた資史料からは二つあったと考えられると考察した。あわせて、ジョチ・ウルスのハンたちの季節移動、埋葬地(墓廟都市)としてのサライおよびその近郊の問題をとりあげ、今後のサライ研究の可能性を示した。本報告にもとづき、英語による報告「Where was Sarai, "the Capital City" of the Jochid Ulus?: New Perspectives for Research on Sarai」、そしてロシア語による報告「Захоронения в джадвале Мунтахаб ат-Таварих-и Муини: Сыгнак, Сарайчук и Сарай」を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
引き続きの新型コロナウィルス流行のため予定していた写本調査を行うことができなかったため、計画に遅れが生じている。入手済みの写本および資史料の分析にもとづき、おもにヴォルガ・ウラル地方の諸史料、そして後期ジョチ朝史料の参照史料や歴史認識に関する分析を進め、サライをめぐる諸問題に関する研究成果を学会で報告することができたが、論文化の作業にやや遅れが生じている。未実施の写本調査を遂行するため、計画の延長申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの状況が改善されれば、クリミア・ハン国関係史料などの写本調査を行いたい。最終年度となるため、まずはヴォルガ・ウラル地方史料『ダフタリ・チンギズ・ナーマ』に関する日本語論文の公表を行う。また、研究成果を国際学会においても報告し英語論文として公表したい。サライをめぐる諸問題に関する論文を公表すると同時に、後期ジョチ朝史料におけるサライの記憶についても調査したい。本研究のまとめとして、中央アジア、ヴォルガ・ウラル地方、クリミアの諸地域を比較しながら、後期ジョチ朝史料の歴史叙述のあり方、歴史認識の変容の解明に向けて研究を公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行により計画の延長申請を行ったため。
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