本研究の目的は、ジョチ・ウルス後裔政権史料の文献学的研究および写本調査により、モンゴル帝国時代に関する歴史的知識を抽出すること、また、後代がいかにモンゴル帝国時代を認識していたか、チンギス家/ジョチ家の権威がいかに保持され、あるいは変容したかを明らかにすることにある。 おもな成果として、ジョチ・ウルス後裔政権史料がラシード『集史』とティムール朝史料(『勝利の書』)を融合したテュルク・モンゴル伝承を受け継いでいたこと、また、「ジョチ家/ジョチ・ウルス」への帰属意識が保持され、これら諸史料がジョチ・ウルスの解体を、ジョチ家内のトカ・テムル家とシバン家諸王統による再編と認識していたことを明らかにした。
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