研究課題/領域番号 |
19K01033
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今松 泰 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任准教授 (80598938)
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研究分担者 |
矢島 洋一 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (60410990)
磯貝 真澄 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (90582502)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 聖者廟 / 墓碑銘 / スーフィー / 聖者崇拝 / 聖地参詣 / ロシア帝国 / ヴォルガ・ウラル地域 / 中央アジア |
研究実績の概要 |
交付申請書記載の研究実施計画では、ウズベキスタンのタシュケント市とカザフスタンのテュルキスタン市で墓廟の調査と史資料の収集を行うはずだったが、新型コロナウイルス感染症拡大のため、それは実施できなかった。そのため、前年度にロシア連邦ウファ市近郊のフセイン・ベク廟(アク・ズィラト墓地)で写真撮影により収集した史資料の読解・分析と、そのための研究文献の入手を、新型コロナウイルス感染症拡大に関係する状況の許す限りにおいて進めた。 研究分担者磯貝は、ロシア帝国のムスリム宗務行政機関であるオレンブルグ・ムスリム宗務協議会が19世紀末に行ったフセイン・ベク廟の整備の詳細を明らかにするための関連研究として、特にウラル南麓からカザフ草原の遊牧・半遊牧地域のムスリム行政に関する議論を検討した。また、フセイン・ベク廟の整備を支持したはずのウラマーの活動についても不明な点が極めて多いため、ロシアでの研究協力者であるマルスィル・N・ファルフシャートフ(ロシア科学アカデミー・ウファ連邦研究センター歴史言語文学研究所)とともに、その解明を進めた。 研究分担者矢島は、やはり関連研究で、中央ユーラシアにおけるイスラーム神秘主義教団の展開過程を解明する作業として、サファヴィー朝成立前のサファヴィー教団の活動を明らかにし、それが各地の政治状況に影響を与えた可能性を指摘した。 また、磯貝は墓碑銘の読解・分析の成果を紙媒体だけでなく、デジタルアーカイブで公開するための技術的な検討と作業を進めた。その詳細は下記「今後の研究の推進方策」で述べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大のため、交付申請書記載の研究実施計画は、計画通りには進んでいない。特に本研究課題は、ロシアやウズベキスタンなど、国外での史資料収集が重要な位置を占めるものであるため、それに直接関係する計画を進めることができていない。しかし、オンラインでの研究交流が以前より容易になったこともあり、特にロシアで研究を進めているマルスィル・N・ファルフシャートフと密に連携して、新たに研究協力者を得て、研究計画を再編することができている。その詳細は下記「今後の研究の推進方策」で述べる。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書記載の研究課題(A)については、前年度にロシア連邦ウファ市近郊のフセイン・ベク廟で写真撮影により収集した墓碑銘の読解・分析結果を、まずはデジタルアーカイブで公開することをめざす。当該史料は特にロシアの研究者の間で、より利用しやすい形での公開が強く望まれているため、この計画が実現できれば国際学界への大きな貢献となる。ロシアでの研究協力者はマルスィル・N・ファルフシャートフ、アイブラト・V・プシャンチン(以上、上記の歴史言語文学研究所)、エヴゲニー・V・ルスラノフ(バシコルトスタン共和国文化遺産保護局考古遺産部長)のほか、新たにラシト・Iu・アックベコフ(上記の歴史言語文学研究所)が参加する。アックベコフは近年、フセイン・ベク廟について精力的に研究を進めており、彼の参加によって、新型コロナウイルス感染症にかかわる研究の遅れを質的な面で補えるはずである。 研究課題(A)についてはデジタルアーカイブでの成果公開とともに、墓碑銘を中心とする史料解題を論文にまとめて公開する。その際、論文をオープンアクセスにできるよう努め、現在のオープンサイエンスの方向に沿った新しい研究成果の提示手法を探る。 研究課題(B)については、ウズベキスタンやカザフスタンでの史資料の収集が可能になる場合は、それを試みる。それが難しい場合は、入手済み、または入手可能な史資料での分析を進める。そのある種の代替として、課題(A)の研究成果のブラッシュアップに努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染症拡大のため、ウズベキスタンなどの国外での史資料の収集ができず、旅費を使用しなかったことによる。 今後の使用計画だが、まず、現在の新型コロナウイルス感染症の拡大状況が続く場合は、旅費としては、ロシアでの研究協力者がロシア国内を出張して史資料を収集するために使用する。また、前年度に収集した墓碑銘の読解・分析の結果をデジタルアーカイブで研究成果として公開するための諸費用、たとえば外国語校閲やデジタルデータ保存媒体購入などに使用する。さらに、研究成果を論文にまとめて公開するための費用、たとえば外国語校閲や送料などに使用する。研究文献の複写や購入による入手にも使用する。
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