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2022 年度 実施状況報告書

宋代社会における多層且つ複合的な士大夫ネットワークの研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K01035
研究機関大阪公立大学

研究代表者

平田 茂樹  大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (90228784)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード手紙 / ネットワーク / コミュニケーション / 集団心性 / 公と私
研究実績の概要

宋代の手紙を史料として士大夫のネットワークとコミュニケーションについて研究を行い、以下のことが明らかとなった。
(1)宋代士大夫のネットワークを分析すると、郷里社会を中心とする基層社会、その上に県、州、路の社会が存在し、さらに首都を中心とした広域空間が存在する。科挙、戦乱、災害、あるいは経済的事情など当時の流動性の高い状況の中で、士大夫は地縁、血縁、学縁、業縁さらには政治的なグループなど異なる関係性の中で交流を行っていた。
(2)これらのネットワークは重層的且つ複合的に交じり合うもので、各層の実態は異なっている。
(3)手紙はこれらのネットワークとコミュニケーションをつなぐ媒体として機能するものであり、それは「公」と「私」の二つの側面を持ちながら機能している。
(4)「公」の空間で機能する手紙は当時の官僚制度や官界の慣行と深く関っている。一方「私」の空間で機能する手紙は、1対1のコミュニケーションの手段として機能するとともに、現在のSNSさながらに「私的領域」の中で意見交換や議論を開放的な形で行う手段としても存在していた。
(5)手紙は個人の思想や考えを反映するものであるとともに、当時の「集団心性」をも伝えてくれるものであり、南宋人の北宋時代への共通した意識や南宋政治に対する思いなどを読み取ることができる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

手紙を史料として宋代士大夫のネットワークとコミュニケーションを分析する成果として『宋代政治空間與結構ー科挙社会的“人際網絡”研究-』(浙江古籍出版社 2022年12月)を刊行することができた。この中でほぼ予定していた課題をこなしている。ただ、宋代に残る手紙史料それ自体は膨大であり、 まだ未解決の課題も一部残ることとなった。

今後の研究の推進方策

今年度は一部残された課題を解決するとともに、宋代士大夫のネットワークの在り方についてさらに問題を深めていく予定である。特に手紙以外の書かれたものに目を向けることにより、士大夫たちが一種の読書共同体を形成し、共同の意識を養っていたことを考察することを考えている。

次年度使用額が生じた理由

コロナの影響で国内外の学会に参加することができず、また、参加する際はzoomなどの遠隔方式を取ったため、次年度の学会参加のために予算を残すこととなった。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 南宋士大夫劉克荘的交游空間与社会網絡2022

    • 著者名/発表者名
      平田茂樹
    • 雑誌名

      東洋史論叢

      巻: 22 ページ: 53‐69

    • 査読あり
  • [学会発表] 劉克荘の書信から見た「濟王冤案」と「梅花詩案」2022

    • 著者名/発表者名
      平田茂樹
    • 学会等名
      日本宋代文学学会第9回大会
  • [図書] 宋代政治空間與結構ー科挙社会的“人際網絡”研究-2022

    • 著者名/発表者名
      平田茂樹
    • 総ページ数
      379
    • 出版者
      浙江古籍出版社

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公開日: 2023-12-25  

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