研究課題/領域番号 |
19K01040
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
櫻井 智美 明治大学, 文学部, 専任准教授 (40386412)
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研究分担者 |
森田 憲司 奈良大学, その他部局等, 名誉教授 (20131609)
飯山 知保 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20549513)
渡辺 健哉 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (60419984)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 元朝 / 元代 / 都市制度 / 監察制度 |
研究実績の概要 |
本年度は、コロナ禍により、年度当初より研究計画の微修正を繰り返しつつ研究を進めた。研究組織全体では、啓蒙を兼ねた論文集の出版、ニューズレターの作成(復刊)、研究集会の開催を軸として研究活動を進めることとした。 1,代表者・分担者・協力者それぞれが担当する「元代江南地方制度」「元代華北地方社会・制度」「元代華北都市制度」等について、その成果を含め、かつ元朝史の最新研究を紹介する論文集の出版に向け、編集作業を進めた。年度中の刊行はかなわなかったが、ほぼ予定どおり、2021年度前半に出版の予定である。2、森田憲司編『13、14世紀東アジア史料通信』25号を本研究のニューズレターとして出版し、森田と村岡が論稿を寄せた。本誌は、モンゴル帝国史・元朝史研究グループの成果をいち早く学会に伝える役割を目指して2004年に創刊され、24号(2017年)で休刊していたものである。3、「元朝史研究会(植松正教授講演会)」を開催し、国内外から多くの元朝史関係研究者の参加・聴講を得た。また、懇談会(情報交換会)を行い、コロナ禍での新しい学術交流のかたちを確立することができた。 個別の研究として、櫻井は宋代から元初に至る地方監察制度の展開について、江南を中心に検討を行い、牛が華北山東における研究を進め、双方を比較した。飯山は、元以降の華北社会の変遷を見通し、元代における移住やその時代に対する認識が現在の地域社会のアイデンティティ形成に関わっていることを明らかにし、渡辺はその報告のコメンテーターを務めた。また、森田を中心に人名を刻んだ「題名石刻」の整理を進め、一部の石刻については、細かい検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により予定していた現地調査一件を見送った。また、参加予定だった海外学会の開催が見送られたことや、昨年度からの持ち越し課題であった石刻資料情報の整理を今年度行ったことなどにより、学会発表の準備には必須であった、地名と職名の関係の調査や、具体的な組織に関する題名の調査を後回しにしたため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は最終年度として、粛政廉訪司を初めとする元代の監察機関について、その変遷・解体の様相を明らかにし、地域比較を行う。近年、河東山西道・山北遼東道、黒水城文書を利用した河西隴北道等、西部乾燥地区や東北地区など、地域を絞った監察制度の運用体制に関する研究が、主に中国で進められてきた。本項目において進めている山東東西道や、江南地区(浙東海右道、江南浙西道、福建ビン海道など)における検討と比較して、元代の監察制度に関する地域比較検討を進め、監察制度の時代的特徴とともに、地域偏差を明らかにする。この「元代の監察制度と地域社会」のテーマについては、本項目の軸として、論文集の出版にあわせてワークショップを開催して評価を募る。 また、ニューズレター『13、14世紀東アジア史料通信』26・27号を発行し、曲阜関連碑刻や「題名石刻」の整理の成果を公開する。 最後に、論文集に対する他時代研究者からの意見を受けて議論を進め、本研究を総括する目的で、公開シンポジウム(第二回「元朝史研究会」)を年度後半を目途に開催する。「元朝史研究会」については、本項目終了以降も維持し、日本の元朝史研究のプラットフォームとして海外との交流も視野に活動を続けていけるよう、その開催方法や成果の公開の方法についても検討する。各自の進めてきた制度史・都市史に関する研究成果は、各自論文等にまとめて投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旧年度からの持ち越し費用があったとこと、コロナ禍で国内を含めて資料調査や対面の集会が困難になったり代替措置が可能になったりしたこと、当初年度末に予定していた書籍の刊行が延びて2021年度となったことにより、次年度への持ち越しが生じた。それらの費用については、2021年度に持ち越した作業の費用、及び当初不足していた研究成果の出版費用などなどに充てる予定である。
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備考 |
・研究集会「元代史研究会」(植松正先生講演会)の主催(オンライン、2020年11月7日) ・ニューズレター『13、14世紀東アジア史料通信』25号の出版(2020年10月) 村岡倫「モンゴル帝国時代の史料に見える方位の問題 ― 時計回り90度のずれが生じる要因 」pp.2-14. 森田憲司「資料紹介:宋高宗書徽宗文集序」pp.15-20.
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