研究課題
基盤研究(C)
本研究では,元代の中~後期の両浙地域における諸産業のうち,綿業と海運に着目して分析することにより,モンゴル政権下の江南社会経済の動態について考察を行った。綿業については,長江デルタ地域における展開をさまざまな角度から検討した。一方,海運については,それを担った船戸や新興商人を含む地域エリートの具体像を探るとともに,海運運営体制の展開過程を5つの時期に区分し,それぞれの特徴を示すことができた。
モンゴル元代史
モンゴル元代の海運についてその歴史的評価を示すことができた。中国史の枠組みのもとでは,南北中国を経済的に一体化させる新たな選択肢であると同時に,内陸水運や塩政ともリンクしつつ財政を支える物流ネットワークの主要幹線としての側面を持っていた。視野をユーラシア規模に拡大してみると,モンゴルの海洋政策のもとで南海貿易と接続していた江南地域を,さらに北方の大都へと接続する役割を果たしたと評価できる。この海運事業において重要な役割を果たしたのが,元代中後期の両浙地域における新興の船戸や商人であった。