研究課題/領域番号 |
19K01046
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研究機関 | 神戸女学院大学 |
研究代表者 |
小林 隆道 神戸女学院大学, 文学部, 准教授 (40727335)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中国史 / 文物 |
研究実績の概要 |
2年目となる当該年度は、前年度から進めている宋・元代の序・跋の整理を継続し、総体的な分析を行うデータの構築を行った。また、個別具体的な考察対象として注目している牟ケン(1227-1311)によって作成された「跋范文正公書伯夷頌」の分析を行った。この跋文は北宋の范仲淹の書法作品「伯夷頌」に付けられたものである。その「伯夷頌」は紀元前11世紀の殷周革命期の伯夷の行為を、8-9世紀の唐代の韓愈が讃えた文章としたものを、11世紀の宋代の范仲淹が書したものである。それら行為・文章・書法それぞれののすばらしさは、「三絶」とも讃えられ、後世に多くの跋文が付された。その作品群を大德四年(1300) に石に刻み、立石する際に記されたのが牟ケンの「跋范文正公書伯夷頌」であった。その石碑の記録は『江蘇通志稿』金石十九「范文正公伯夷頌」として残されている。それは、范仲淹の「伯夷頌」にはじまり、牟ケンの「跋范文正公書伯夷頌」で終わる。しかし、牟ケンの跋以降にも、後世の士人たちにより跋文は付け加えられ続け、「范文正公伯夷頌」には様々なバージョンがあることが明らかになった。明代の状況を留めているのが『趙氏鐵網珊瑚』巻二「范文正公黄素小楷一帖并跋」であり、清代の状況を留めているのが拓本『御題高義園世寶』である。それらのバージョンを比較検討し、「伯夷頌」の原本や石刻の姿の検討を行った。 また、本研究では研究成果を国外でも発表することを計画した。その計画に従い、中文論文『南宋後期加封文書的頒発流程:以《道藏》所收《三茅真君加封事典》為分析対象』を、平田茂樹、余蔚主編『史料与場域:遼宋金元史的文献拓展与空間験』(上海人民出版社,2021年2月)に発表した。これは文物を史料化するという本研究の目的に即したものでもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響により、当初予定していた調査・出張等が実施できなかった。また、所属機関における教務上での新型コロナウイルス感染症防止の対応に時間がとられてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの影響が予想以上に長引き、当初計画していた海外でのフィールドワークは現在行えない。そのため、当初の計画を変更し研究期間を延長する等して、それら調査を行える時期が来るのを待つ。また、前年度の方針を継続し、文献資料からの分析に重点を置き、史料批判の精度を高めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、予定していた調査・出張等が遂行できなかったため。 文献資料を用いた分析の精度を高めるため、書籍購入やデータ処理の機材に助成金の使用を計画している。
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