研究課題/領域番号 |
19K01047
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
津田 拓郎 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70568469)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カピトゥラリア / 勅令 / シャルルマーニュ / 神話化 / カール大帝 |
研究実績の概要 |
初年度は当初の予定通り、近代歴史学誕生以降の叙述における「カピトゥラリア」認識の分析を行った。ここで得られた成果は、2年目以降の分析・調査の基盤となるものとして位置づけられる。 また、794年のフランクフルト会議で作成された「カピトゥラリア」について、英文での論文を刊行することができた。ここでは、従来「勅令」とみなされていた当該文書が実際にはフランクフルトでの協議から生まれた雑多な性質の文書を結合したものであることが明らかにされ、「カピトゥラリア」=「勅令」という伝統的理解が維持できないということが改めて指摘された。また、「勅令」のような性質をもち、王国中に配布されたと考えられる789年の「一般訓令」も、当初の発布・配布後はシャルルマーニュ宮廷において容易に再複写できるような状況に置かれていなかったことも明らかになり、シャルルマーニュのもとでの文書管理のありかたについて、過度に体系的なあり方を想定してきた先行研究の見直しが必要であることも浮き彫りになった。 また、今年度は日本史・イスラーム史の研究者とともに行ったシンポジウム、ウィーン大学教授の講演に対するコメント(英語)、高等学校教員に対する講演という3箇所でで、研究成果を広く公表することができた。これらの口頭発表においては、直接的に「カピトゥラリア」を扱ったわけではないが、「カピトゥラリア」が「勅令」とみなされていく過程の背後にあったと考えられる「シャルルマーニュ治世の記憶の神話化」の問題が扱われており、本研究課題の成果とも密接に関わる内容を有している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りの分析・調査を行うことができており、研究成果の公表も行うことができているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の研究通り、「カピトゥラリア」が「フランク君主の勅令」と(誤って)みなされていく過程の研究を行っていく。なお、コロナウィルス流行の関係で、当初予定していたドイツに滞在しての資料調査が困難となる場合は、事態が収束するまでの間は手元の資料に基づいて行うことができる作業を優先して作業を行う形となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予期せぬノートパソコンの買い換えが生じたため、予算額に余裕を持って前倒し請求を行ったが、予想よりも安価に購入できたため残額が生じている。これらについては、次年度以降に当初の計画通り消化していくことを予定している。
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