研究課題/領域番号 |
19K01048
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小田中 直樹 東北大学, 経済学研究科, 教授 (70233559)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 現代フランス都市史 / 歴史理論 / 史学史 / 歴史学方法論 |
研究実績の概要 |
本年度も、新型コロナウイルス感染症が研究対象地フランスで猛威を振るっており、また、海外調査が法的にもきわめて困難であったため、本課題の中核をなすフランス・ニーム市の同市文書館における資料の存在状況のチェック・収集・解読・分析については、実施を断念せざるをえなかった。やむなく、すでに収集を終えていた同市文書館所蔵資料の解読・分析と、本課題に関連する先行研究のチェックをおこなうことに集中した。
その結果、同市に存在する集合住宅地区マス・ド・マング(Mas de Mingue)について、移民統合の2つのタイプである、USAなどで優勢といわれる「サラダボウル型」と、フランスを典型とする「るつぼ型」のうち、同地区については実は「るつぼ型」ではなく「サラダボウル型」の統合政策が採られ、それが同地区における統合を比較的成功裏に進めたのではないか、ということを示唆する資料をいくつか発見した。今後は、まだ収集できていない資料とクロスチェックし、この仮説の妥当性を検証することが必要であると考えている。
また、これら作業の過程で、本課題ひろくは歴史学に関わるメタ次元の問題、すなわち(a)現代日本において、歴史学はいかなる状況にあるか、(b)歴史学の記述はいかなる特徴を有するか、(c)日本で外国の歴史を研究することとはいかなる意味をもつか、といった問題に取組む必要性を感じ、これらテーマについても研究を進め、その成果を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
先述したとおり、新型コロナウイルス感染症のアウトブレイクが長引き、主張な資料収集機関であるフランス・ニーム市文書館における資料の存在状況チェック・収集が出来ず、したがってそれらの解読・分析ができないことが最大の理由である。一種の「代替措置」として歴史理論・史学史・歴史学方法論に関する研究を進め、それらについては一定のアウトプットを出すことはできたが、本課題のコア部分における遅れをカバーするには至らないというのが率直な感想である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、フランスでは、新型コロナウイルス感染症のアウトブレイクが収束をみせているため、この傾向が維持された場合はニーム市に滞在し、同市文書館における各種作業を再開することにより、遅れを取り戻す予定である。ただし、この間の遅れは著しいものがあるため、本課題の課題期間の延長を申請せざるをえないだろうと予想している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のアウトブレイクが長引き、予算の大部分を占める海外旅費を用いたフランスにおける資料知用さが出来なくなったためである。2023年度は、同アウトブレイクが収束の傾向をみせているため、資料調査を実施する意向である。
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