研究実績の概要 |
当年度には、研究の基礎的な準備作業として、必要な史・資料の収集、解読、整理を行った。 具体的には、Heribert Sturm, Eger. Geschichte einer Reichsstadt, Augsburg 1951; Andreas Wolf, Das Egerland in der Tschechoslowakei. Politik und kollektive Erinnerung in einer ehemalige Reichspfandschaft, in: Bohemia Bd.41, Nr. 1, 2000, S. 36-58などの先行研究を読み、研究対象である、チェコ西部のヘプ(エーガー)市の歴史的背景、両大戦間期の歴史的事件とその意義などを把握した。それと共に、2016~17年度に現地で収集した、ヘプ国立郡文書館(SOkACh)所蔵の財政・市有財産関係文書を整理し、両大戦間期のヘプの市有林、その他の市有財産の所有・経営状態を明らかにした。また、『ヘプ市公報』に掲載された、市予算審議の議事録から、チェコスロヴァキアの成立から1920年代末に至る同市の予算の構成、付加税率の推移、歳出対象や課税に関する論争と各党派の姿勢などを整理した。更に、1927年地方財政法と、それによって生じた市の財政上の困難に対する各党派の姿勢も明らかになった。 以上で解明したことを基に、(1)森林を中心とするヘプ市の市有財産の財政上の意義、(2)チェコスロヴァキアの1927年地方財政法をめぐる、自治行政の現場での論争の一事例としてのヘプ市での論争についてまとめ、次年度以降にその成果を発表する予定である。
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