研究課題/領域番号 |
19K01052
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
大月 康弘 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (70223873)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 皇帝 / ローマ / ビザンツ / フランク / イタリア / 教皇 / コンスタンティノープル / アーヘン |
研究実績の概要 |
9ー10世紀のヨーロッパ・キリスト教世界における「皇帝」称号をめぐる東西交渉に関する情報の整理・分析を推進した。初年度であったので、先行研究の整理、批判的分析をするとともに、コンスタンティノープル(ビザンツ帝国宮廷)とアーヘン(フランク王国宮廷)およびイタリア諸勢力(ローマ司教ほか)との間で行き交った使節のリスト、また伝来する史料所言の整理を行った。 まず、関係史料テキストの確認を行い、リスト化した。特に関係する文言を抜き書きして、今後の作業の備えとした。史料テキストは、ギリシア語とラテン語による。両者間の用語法に留意しながら、日本語訳の作成に着手した。コンコルダンスの作成も試みているが、進捗は思うようには行っていない。ともあれ、テキスト分析を進め、そこに見られる「ローマ皇帝」称号、および「ローマ」という一般的呼称の含意を検討した。 テキストは十分に豊富であるので、初年度の本年度は、まず重要と思われる年代について試掘的な分析をするにとどまった。つまり、870年代、また960年代である。両時期とも、東西宮廷(皇帝)が互いの称号をめぐり政治的な駆け引きを行った時代だった。この時期には相対的に豊富な史料所言が伝来している。この量的拡大の含意も分析対象となった。ともあれ、そこには、両者の「ローマ皇帝」称号に込める理念や政治的思惑が看取され、中世キリスト教世界の政治理念の検討素材として重要と認識された。 一連の作業所見を踏まえて、今後の研究作業の進捗スケジュールの調整を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調と思料する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、史料テキストの分析に注力する。ギリシア語(ビザンツ側史料)とラテン語(フランク、ローマ教皇ほかイタリア諸勢力側の史料)での「皇帝」含意の比較考量を進め、「ローマ皇帝」理念、「ローマ」呼称の含意の抽出に努める。 分析成果は、随時、和欧文での論文として発信する。また、国内外の研究会等で報告の機会をもちたいと考えている。しかし、現下の世界情勢を勘案すると、この方面での行動は難しいかもしれない。可能であれば、年度末にヨーロッパ(フランスor/andギリシア)への出張を行い、資料収集を兼ねて現地の同学者との交流を設定したい。 しかし現段階では、論文・著作での成果発信に注力するのが得策かとも思う。これからの情勢を注視し、適切かつ柔軟に対処できるよう研究を進める。
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