本研究はコロナ禍の影響もあり、2020年度と21年度の2年間、海外での調査活動が実施できなかったこともあり、一部、当初のプランを変更せざるを得なかったところがある。具体的には、当初、計画していたクロアチアや北欧、キプロスなどへの調査を見送り、調査活動をイタリアに集中させることに方針を変更した。2019年度は、シチリア(パレルモ)から南イタリア(カラブリア、バシリカータ、プーリャ、カンパニア)、ヴェネツィアとアドリア海北岸域に関して夏季に調査旅行を実施した。ここでは、カラブリア地方に残されたビザンツ文化を色濃く残す中世教会の遺構(スティーロのカトリカ聖堂)やプーリャやカンパニア地方のロマネスク期の教会(レッチェ近郊のサンタ・マリア・デ・イ・チェラーテ教会やナポリ近郊のサンタンジェロ・イン・フォルミス教会など)、そしてアドリア海北岸部のアクイレイアとグラードの大聖堂などを実地に調査できたことが大きな収穫となった。その後の2年間は前述のように、コロナ禍のために研究活動はやや足踏みを強いられたが、研究期間の延長が認められたことで、コロナ禍が一段落した2022年夏季には再度、イタリアにおいて調査活動を実施することができた。このたびの調査活動の主眼が置かれたのはイタリア中北部であり、アドリア海沿岸部のアンコーナからリミニにかけて、エミリア・ロマーニャ地方のラヴェンナとフェラーラ、モデナ、トスカーナ地方のピサ、フィレンツェ、ルッカ、アレッツオなどの都市を巡り、資料を収集した。この調査では、フェラーラ・フィレンツェ公会議前後のイタリアにおけるビザンツ帝国との様々な交渉の有り様に関して興資料を資料を収集することができた。現在、これらの調査活動で得られたデータは整理、分析中であり、近い将来に活字化して公表することを計画している。
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