今回の研究の課題は、ほとんどビザンツの支配が及んでいない遠隔地域の住民が、ビザンツの宗主権下にあることを主張し、皇帝の臣民としての地位を誇る態度を示した理由を究明することにあった。コロナ禍の影響で当初の調査プランは一部、変更を余儀なくされ、調査はほぼイタリア本土に集中することになったが、イタリアのトスカーナ、カンパーニア、プーリア、カラブリアなどの地域において2度の調査活動を実施することができた。現地に残る歴史的建造物や絵画・美術工芸品などの視覚的資料を実地に見聞し、文献を読み解くだけでは体得できなかったイタリアにおける「ビザンツ的なるもの」の片鱗を感じることができたことは大きな収穫であった。
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