ルクセンブルク家カール4世を事例として、中世君主の聖人崇敬から政治的課題、統治理念、信仰世界の解明を試みた。年代記に記録されたカールの聖遺物収集の傾向から彼の意図を考察し、併せてカルルシュテイン城の聖十字架礼拝堂の壁画群における聖人君主の選択理由を分析した。彼が、壁画の中心に置いたカール大帝に自らに準えつつ、イングランドや北欧、ハンガリー、アルルなどの聖人君主を配置し、チェコ及び帝国を中心とした東西南北世界に君臨するイメージを描いていたと結論した。また、そうしたカールの聖人崇敬に伴う諸々の行為が、当該領邦の支配階層を構成する貴族や聖職者の政治的活動に与えた影響を、前王朝と比較しつつ検討した。
|