研究課題/領域番号 |
19K01064
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
飯尾 唯紀 東海大学, 文化社会学部, 准教授 (80431352)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ハプスブルク / プロテスタント / ハンガリー / 宗派取次 / 複合国家 |
研究実績の概要 |
本研究は、18世紀のウィーン宮廷におかれたプロテスタント「宗派取次」の実態解明を通じて、近世ハプスブルク君主政における統治の凝集化の力学を描くことを目的とする。研究計画では、最初の3年間を「宗派取次」制度のモノグラフ作成の期間と位置づけた。このため、初年度に当たる本年度は、準備作業として現地での史料調査と既存の研究の収集、分析を行った。 史料調査は、9月と2月にオーストリアとハンガリーにおいて集中的に実施した。オーストリアの文書調査では、当初想定していた「家門・宮廷・国家文書館」の文書群が本研究には限定的にしか利用できないことが判明した。一方、ハンガリーでは、教会文書館や中央政庁の文書館に多量の利用可能な史料があることが改めて確認できた。さらに、研究計画作成時には予想していなかったが、プロテスタントが多数派を占めたデブレツェンなど主要都市の文書館にも関連資料が多数存在することがわかった。これまでの研究ではそれらの文書を利用したものは確認できず、その利用により新たな知見を加えることも期待できることとなった。 既存の研究のサーベイも、順調に進めることができた。本研究が対象とする「宗派取次」の研究は極めて少なく、散発的であるが、既発表の論文や著作のほぼ全ての収集を終えることができた。昨年度は順次そのサーベイを進めた。また、より広い視野から近世の帝国における中央と地方の関係について考察するため、近年の英語圏、ドイツ語圏で発表された諸研究にも調査範囲を広げ、資料収集を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初の3年間は研究課題についてのモノグラフ作成期間と位置づけており、特に初年度はその準備期間として資料収集と分析を進めることを課題とした。 資料収集に関し、日本では現地の諸研究の収集や文書史料の入手が困難であることから、2度の現地調査を計画し、実際に2019年9月と2020年2月に2度の調査を行うことができた。調査においては、ほぼ当初期待していた通りの成果を得ることができた。また、当初の計画以上に調査範囲を広げて予備調査を行った結果、予想を超える未知の史料を発見することもできた。 史資料の分析もおおむね計画通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
最初の3年間はモノグラフ作成期間であり、本年も引き続き基礎的な史資料の収集と分析を実施する予定である。ただし、現在の感染病の流行のため、当初計画していた9月と2月の現地ハンガリーにおける調査の実施見通しがつかない状況となっている。現地での調査が実施できない場合には、調査期間を次年度に移動することもで検討している。また、その場合、本年度には収集済みの史資料の検討と分析を重点的に行い、モノグラフの部分的な執筆をすすめることを予定している
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