研究課題/領域番号 |
19K01064
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
飯尾 唯紀 東海大学, 文化社会学部, 准教授 (80431352)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ハプスブルク / プロテスタント / ハンガリー / 宗派取次 / 複合国家 |
研究実績の概要 |
本研究は、18世紀初頭にウィーンに置かれた「宗派取次」の実態を解明し、それを通じて近世ハプスブルク君主国における統治の凝集化の力学を描くことを目指している。「宗派取次」についての研究がほとんど存在しないことから、まずは最初の3年間を使ってその実態解明に取り組むことが目指された。 2年目にあたる2020年度には、史料の収集を進め、当該制度の詳細なモノグラフを準備することを計画していた(取次の人物誌研究、制度をめぐる教会内協議、俸給、就任にあたっての指示書等の基礎的情報の収集および分析など)。しかし、新型コロナ感染症の拡大により、予定していた2度の現地における史料調査は実施できなかった。また、現地研究者との意見交換も実施できなかった。このため、2020年度は初年度に収集した史料の分析を中心に研究を進めざるを得なかった。 史料分析あたっては、18世紀前半に活動した最初の3人の改革派取次役の書簡を中心に、「宗派取次」制度成立期の人物誌情報の整理を行った。これまで現地の研究等で取り上げられたことがあるのは、このうち3人目の人物のみであり、最初の2名についての情報はほとんど知られていない。このような研究状況にかんがみて、研究の欠落を埋めるのみでなく、制度確立期の状況を解明する上で、貴重な情報が数多く得られた。 また、改革派教会の運営実態について、トランシルヴァニアの事例研究まで調査範囲を拡大し、ハンガリーとの関連や類似性について考察を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度には、2度の現地調査を実施し、文書館史料や文献収集を行うことを計画していた。しかしながら、新型コロナウィルス感染症の拡大のため、現地への出張を行うことができず、この面での遅れが生じた。また感染症拡大下での勤務状況の変化に伴い、研究環境の再整備にも時間を割かざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
3年目にあたる2021年度も、感染症の状況が不透明なため、現地調査による史料収集の見通しはたっていない。このため、2021年度前半は、引き続き2019年度に収集した史料の分析に注力する。また、これまでの史料分析に基づき、モノグラフの一部を論文として発表していく。予想外に遅れしまった史料収集の作業は、2022年度以降に集中的に実施することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大のため、当初予定していた旅費等の使用ができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度の海外出張旅費の利用については依然として不透明ではあるが、2-3月に集中的に海外出張を実施予定である。また、現地からの資料を取り寄せるため、物品費および人件費を多く利用する予定である。
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