研究課題/領域番号 |
19K01064
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
飯尾 唯紀 東海大学, 文化社会学部, 教授 (80431352)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ハプスブルク / プロテスタント / ハンガリー / 宗派取次 / 複合国家 / 政教関係 |
研究実績の概要 |
本年度は、9月と3月にハンガリーやオーストリアを中心に2週間程度の海外調査を実施することができた。ハンガリーでは、改革派教会の文書館での史料調査を通じて、本研究課題の中心的目的であるウィーンの宗派取次制度の主要史料の収集をほぼ完了することができた。オーストリアで関連する史料群を発見することはできなかったが、ウィーンのハンガリー文化施設で意見交換を行い、今後の研究交流や研究支援の環境を整えることができた。 収集した史料の分析も順調に進めることができた。関連史料の多くはハンガリー改革派教会の指導者、後援者とウィーンの宗派取次役の間の書簡であり、その内容からは、制度の成立背景や制度維持をめぐる教会側の腐心などを鮮やかに再現できることがわかった。しかし、当初予想したよりも多量の関連史料が発見されたため、体系的な分析には時間を要し、22年度内に成果を公表することができなかった。現在、宗派取次制度の成立事情、最初の3人の宗派取次役の経歴と活動実態、宗派取次の維持に必要な財政基盤をめぐる諸問題について、日本語と英語で論文として公表する準備を進めている。 なお、史料収集と分析の過程で、本研究主題を広く啓蒙期のハプスブルク君主国の教会政策に位置づける視座を得ることもできた。今回検討している改革派教会と宮廷の関係を、福音ルター派やカトリック教会の事例とも比較検討することで、ヨーゼフ2世の寛容令に帰着するハプスブルクの宗教政策に新たな知見をもたらしうるという見通しをえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
20年度、21年度に現地調査ができなかった影響が遅れの最大の原因である。22年度には現地調査を再開して史料収集と分析を進めることができたが、当初予想していたより関連史料の量が多く、史料分析に時間を要してしまっているため、予定していた成果公表に至ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
成果公表が遅れているため、本年度は、研究計画で予定していた主題分析の時間的範囲を限定して史料分析を終えるとともに、成果公表に重点を置いた研究を進める、
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度、2021年度に予定していた旅費の支出がなかったため未使用額が多くなっていた。2022年度には2度の国外出張で旅費支出が増えたが、それまでの未使用額を全額利用することはなかった。 未使用分は2023年度の旅費及び関連書籍の購入、論文投稿のための経費として利用を予定している。
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