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2019 年度 実施状況報告書

旧イギリス帝国植民地におけるアイデンティティの変遷と国旗・国歌論争

研究課題

研究課題/領域番号 19K01072
研究機関筑波大学

研究代表者

津田 博司  筑波大学, 人文社会系, 助教 (30599387)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードカナダ / オーストラリア / ニュージーランド / 国旗 / 国歌
研究実績の概要

今年度は、本研究の時系列上の端緒となる1965年のカナダにおける新国旗制定と、帰結となる2015・16年のニュージーランドにおける新国旗制定をめぐる国民投票を主な対象として、旧イギリス帝国植民地の国旗・国歌に関する論争の概要を把握することを目指した。その一環として、7月28日から8月11日にかけてニュージーランド(ニュージーランド国立図書館)、1月31日から2月17日にかけてカナダ(ケベック州立図書・公文書館、カナダ国立図書・公文書館)での現地調査を実施した。
イギリス帝国の衰退に伴うアイデンティティの変容を経験した1960年代のカナダでは、新たな国民統合の原理である多文化主義を体現するシンボルとして、ユニオン・ジャックを配した従来国旗から現行のメープルリーフ旗への転換が起こった。その議論の過程では、長らくマイノリティとしての不満を抱えてきたフランス系の包摂が焦点となった。新国旗は結果として広範な支持を獲得し、1980年の新国歌制定に向けても道筋をつけることとなったが、この間の国旗・国歌をめぐる言説からは、同時期に台頭するケベック分離主義の影響など、あるべきナショナリズムを模索する上での困難が明らかとなった。
多文化主義の導入や脱植民地化といった面でカナダとの共通性を有するニュージーランドにとっても、国旗・国歌の位置づけは繊細な問題であり続けてきた。1977年の新国歌制定が従来国歌との並存というかたちで決着したことが示すように、植民地時代から続くシンボルの刷新は必ずしも単線的に進行しなかった。2010年代においても、時代に応じた新国旗を求める声が高まる一方で、具体的な意匠の投票では従来国旗が支持を集めるという屈折した結果が生じている。今年度の調査では、こうしたアイデンティティの様相を解明する上での前提となる、イギリス的伝統に対する世論などの知見を得ることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

所定の研究実施計画に基づいて、カナダおよびニュージーランドにおける国旗をめぐる論争の関連性(とりわけカナダにおける新国旗制定が先行事例として参照され、時代によって変容するアイデンティティに合致したシンボルが希求される構造)について、今後の研究につながる多くの知見を得ることができた。論文などによる成果発表は次年度以降に行うこととなるが、三つの年度にわたる研究課題の初年度として、順調に研究活動を遂行している。

今後の研究の推進方策

次年度は、1970年代のオーストラリアおよびニュージーランドにおける新国歌制定とそれ以降の国旗をめぐる論争の過程を検証する。そのための現地調査として、両国の公文書館において、それぞれ数週間の史料調査を予定している。ただし、新型コロナウイルスの流行によって海外渡航が困難となっている状況を考慮し、現地に渡航することなく利用可能な史料を選定することで、研究を遂行する上での支障を可能な限り軽減するように努める。

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公開日: 2021-01-27  

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