研究実績の概要 |
今年度は、本研究プロジェクトの2年目にあたる。提出した研究計画に沿って、長い18世紀のイギリスにおける軍事啓蒙を形成した要素のうち、宗教の側面について研究を行った。 この時期のイギリス陸軍には、軍に帯同する、あるいは各地で布教・説教をする中で軍と接触する聖職者が多数存在していた。こうして継続的に維持された陸軍将兵と聖職者との関わり、また軍隊の中での宗教の役割について、先行研究、一次史料をもとに考察した。史料としては、従軍牧師をはじめとする、軍と関わりを持った聖職者の著作を、主にECCOから収集し分析を行った。また、18世紀半ば以降イギリス陸軍に大きな影響を与えたとされるメソディスト派聖職者の活動、彼らと軍との間の関係を調べるため、陸軍に関する各種公文書(War Office Papers、とくにWO27: Inspection Returns)とともに、ジョン・ウェズレイの日記・著作(Nehemiah Curnock, ed., The journal of John Wesley, 8 vols., London, 1938; Thomas Jackson, ed., The works of John Wesley, 14 vols., London, 1831)の調査を行った。 以上の成果の一部は、辻本諭「十九世紀初頭におけるイギリス陸軍軍人の軍隊経験とキャリア形成―特進将校ジョン・シップ(一七八五~一八三四年)を事例として」『軍事史学』56巻2号、2020年9月、49~68頁において発表した。 一方、初年度から延期していたイギリスでの史料調査については、今年度も引き続き新型コロナ感染症の影響で海外渡航が不可能であったため、実施することができなかった。
|