研究実績の概要 |
当該年度は本研究プロジェクトの3年目(最終年度)にあたり、当初の研究計画に基づき、18世紀イギリスの軍事啓蒙を構成する要素のうち、医学領域に関して詳しい調査・分析を行った。具体的には、長い18世紀のイギリス陸軍に勤務した軍医たちの活動、彼らの軍隊と民間社会にまたがる越境的なキャリア、それによって形成される独自のネットワークを、主に彼らが残した著作を資料として検討した。 年度の前半は、近年の先行研究(Marcus Ackroyd st al., Advancing with the Army: Medicine, the Professions, and Social Mobility in the British Isles 1790-1850, Oxford, 2006など)から調査対象とする人物を絞り(James McGrigor、Robert Hamilton、James Dicksonなど)、プロソポグラフィを進めるとともに、各人物の著作の調査・分析を行った。 年度の後半は、イギリスで史料調査を(1年目に行えなかった調査と合わせて)実施し、その成果と年度前半で進めた史料分析の結果を総合的に考察する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う国外への渡航制限のため実施できなかった。そのため研究期間を1年間延長する手続きをとり、史料調査を含む未実施の研究計画については次年度に行う予定である。 今年度の研究成果の一部については、論文「英領ケープ植民地における陸軍と関連史料 一七九五~一八二〇年」(水井万里子ほか編『史料が語る東インド航路―移動がうみだす接触領域』勉誠出版、2021年、所収)を執筆・発表した。
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