今年度は、本プロジェクトの最終年度にあたる(2021年度より2年間、研究期間の延長が認められている)。研究内容としては主に、2021年度中に実施することができなかった、①イギリスでの史料調査と収集した史料の分析、②プロジェクト全体に関わる総合的な考察を行った。 ①については、ロンドンの国立公文書館(TNA)において5日間の調査を行い、18世紀後半から19世紀前半にかけての戦争局文書(WO)の探索・収集を行った。具体的には、当該時期に進展したとされる兵士の待遇改善に注目し、関連史料を調査した。その成果として、兵士に課される勤務期間の短縮(ナポレオン戦争期以降)、国内の駐屯地における図書館の設置(1830年代以降)という2つの改革の動きを発見し、それぞれの展開を跡づける史料を入手することができた。現在、これらの改革を、その背後にある兵士観の変化と結びつけつつ、軍事啓蒙の一部として位置づける取り組みを進めている。 ②については、前年度までに行った、陸軍将校、従軍医師、従軍牧師それぞれの著作および人的ネットワークに関する分析結果をもとに、長い18世紀における軍事啓蒙がどのような特徴を持ち、どれほどの広がりを持つものであったかを考察した。さらに、①で扱った、兵士の待遇改善を目的とする改革との関係性についても検討を進めている。 研究成果の発信については、その一部を市民向けの歴史講座で発表したほか、研究全体の考察を現在学術論文としてまとめているところである。
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