研究課題/領域番号 |
19K01087
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
古山 夕城 明治大学, 文学部, 専任准教授 (10339567)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ギリシア / クレタ / 法 / 金石文 / アルカイック |
研究実績の概要 |
本研究の2020年度は研究の第2段階として、アルカイック期クレタの金石文史料である法碑文および青銅板碑文の実地検分による採寸と測量実測・刻字状態の確認・写真撮影およびスケッチの作業を実施し、比較研究の具体的データの蓄積と比較分析の作業を実施する計画であった。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大による海外渡航と施設訪問が不可能な状況のもとでは、現地での調査遂行はまったく果たせなかった。 本研究において、当該の金石文を実見し形状形質の特徴を直接的に把握していくことは、もっとも重要かつ必須の要件であるが、それができなかったことで、研究計画の全体的方針の修正を迫られることとなった。 その結果、本年中はオンラインおよび通信販売による資料収集とそれらの情報整理に専念し、今後の現地調査に備えた分析視角の確認、当該史料に関する最新の研究動向の把握と検証、そして来年度以降の研究計画の練り直しを中心に活動するほかはなかった。 しかし、そうした準備作業の過程で、クレタ法碑文のなかで唯一青銅製武具に刻まれた「スペンシティオス規定」について、青銅武具奉納銘との比較検証によって、なぜそのような形状と形質を備えているのかという観点の重要性を認識し、公的機関による法記載の公示という従来の一面的見方は異なる文脈で理解する必要性が浮かび上がったことは、非常に大きな成果であった。このような文脈は、壁面に刻まれた他のクレタ法碑文の理解についても新たな地平を拓く可能性があり、来るべき実地検分の再開を待って、理論と実証の両面から法の社会化に関する総合的な理解に進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染拡大が2020年4月より顕著となり、我が国における緊急事態宣言の2度にわたる発出とその延長、蔓延防止等重点措置への継承など、国内においても海外に向けても移動を厳しく制限する状況となった。その結果本年度は、現地での実地検分を研究活動の根幹に置く本研究にとって、研究遂行の計画と方法を大きく転換・修正せざるを得ない苦難の一年であり、予定していた海外でのデータ蓄積を断念し、ほぼオンラインと通販でのみ研究対象に関する情報収集に限定された活動を余儀なくされたためである。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染に対処するワクチン接種の一般化、それによる海外渡航の可能性が開けてくれば、英国における大英博物館でのクレタ由来の青銅武具法碑文の実測調査、ギリシアにおけるクレタ島での実地検分およびアテネの英国研究所および米国古典研究所での資料収集、そして米国におけるニューヨークのメトロポリタン博物館での青銅武具銘文の実測調査を実施し、アルカイック期クレタの金石文法碑文の携帯・形質的特徴の具体的事例状況のデータを収集し、合わせてそれらが古代に存在していた空間状況の復元推定に向けた情報の整理と分析を進めていく予定である。 ただし、海外への移動が不可能もしくは著しい困難がともなう場合は、金属碑文だけでなくセッコク法碑文に関してもオンラインネットワークでの情報収集と手元にあるデータの解析を集中的に進め、来たるべき現地調査を一層有効なものとするための準備を整えること、そして古代ギリシアにおける法の社会化に関する理論的方法を他地域の法碑文に関する研究成果から模索していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度においては、新型コロナウィルスの感染拡大により、海外渡航による移動先での調査活動がまったくできない状況となった。その結果、当初の計画で予定していた英国での金石文法碑文の測量実地調査、そしてギリシアのクレタ島での金石文銘文の実地調査および出土地遺跡の実地検分が実行不可能となり、それらの移動・渡航に関わる経費約60万円が未使用のまま残ったため。 それについては、今後の研究遂行工程を修正し、海外渡航の制限が解除ないし緩和されたのちに、2021年度実施予定の米国ニューヨークでの金石文史料調査に加えて、2020年度ギリシア金石文銘文調査および遺跡実地検分調査海外調査実施経費として使用していく計画である。
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