研究課題/領域番号 |
19K01087
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
古山 夕城 明治大学, 文学部, 専任准教授 (10339567)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ギリシア / クレタ / 法 / 金石文 / アルカイック |
研究実績の概要 |
本研究の2021年度は、本来であればアルカイック期ギリシアの金石文に刻まれた法碑文の比較研究の第3段階として、クレタ島のイラクリオン考古学博物館・アイヨスニコラオス考古学博物館収蔵の壁面ブロック法碑文とゴルテュン遺跡に現存する大法典碑文を実地調査し、アテネ碑文博物館やロンドンの大英博物館およびニューヨークのメトロポリタン博物館所蔵の各種アルカイック期法碑文と対照を踏まえて、法が歴史実態として現象する状況を復元し、社会に法が受容されてる様相とプロセスを明らかにしてく予定であった。 しかし、その前提となる2020年度に実施するはずであった欧米各地の関連資料の実地検分が、新型コロナウィルスの感染拡大により実現不可能となり、オンラインを通じた情報収集と予備調査で得ていた限定的な実測データの解析を引き続き行っていくことを余儀なくされた。ただし、2020年度の段階で重点的に考察対象とした青銅武具法碑文「スペンシティオス規定」に関し、1970年の公開当初より現在に至るまでの研究動向を追跡してく過程で、クレタ法碑文の具体的な存在状況と実態的様相がほとんど等閑に付されている研究状況が浮かび上がった。 そのため本研究では2021年度も、改めて「スペンシティオス規定」に焦点を絞り、類例となるクレタの石材ブロック法碑文のみならず、クレタ外の青銅板法碑文との比較検討によって、アルカイック期クレタのポリスにおける法の社会化には、法と社会を媒介する特別な技能を持った人物の存在が不可欠であった事実を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染拡大による渡航制限は、本研究のもっとも肝要な現地調査に支障を生ぜしめ、研究対象となる法碑文の実測と観察による実態把握は事実上、不可能な状況であったためである。 オンライン画像による観察では不十分な情報しか得られず、新たに浮かび上がってきた歴史的事実に関しても、関連文献の渉猟と読み込みで多角的に情報収集は進展し、また碑文テキストの読解と解析も進んでいるが、当該諸史料の直接的アクセスによる確証を得られているとは言えない状態である。
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今後の研究の推進方策 |
欧米での感染対策の緩和と日本における渡航制限の部分的解除を待って、まずは頓挫しているロンドンの大英博物館での金石文法碑文の実測調査および精密画像データの収集を行い、次いで、ギリシアのクレタ島での博物館における収蔵法碑文へのアクセス、そしてクレタ島の諸ポリスでの法碑文の存在状況の確認のための現場検証を実施する。状況が許せば、ニューヨークのメトロポリタン博物館においても碑文の調査を行いたい。 それらの現地調査で得られた情報を整理・解析し、本研究の課題目標であるアルカイック期のポリス社会における法の受容について、クレタ島をケーススタディとした成果にまとめていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の遂行上不可欠な海外での現地調査が、新型コロナウィルスの感染拡大にともなう渡航制限により事実上不可能となり、海外旅費を全く使用することがなかったので、その調査計画を次年度に持ち越して実現するため。
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