研究課題/領域番号 |
19K01090
|
研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
塚本 栄美子 佛教大学, 歴史学部, 准教授 (90283704)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 近世ベルリン / ユグノー / 多様性 |
研究実績の概要 |
申請者がすでに入手していた、17世紀末の「ベルリン・フランス人教区の陳情書と選帝侯の回答書並びにドイツ系住民の意見書」の分析を続けるとともに、現地調査が難しい現状でこれらの史料を補完する材料を模索した。その結果、フランス系改革派住民の移住や入植地創設200周年を記念した出版物の検討を行った。というのも、この時期の記念碑的な著作には、200年間に選帝侯がフランス系改革派教区に対して認めてきた、法的特権・経済的援助など、さまざまな特許状や命令書の写しが掲載されており、両者の関係の変化や懸案として意識されていた問題を抽出することができるからである。 しかしながら、それらにはドイツ系住民の動きを明確に示すものが必ずしも多くなく、フランス系改革派教区・選帝侯・ドイツ系在地社会のトライアングルについて結論を出すには不十分であった。この部分については新型コロナ感染症などヨーロッパへの安全な渡航が可能になり次第、現地での史料調査を行いたい。 なお、本年度は、上述の200周年記念出版事業の検討により、副産物としてホーエンツォレルン家治下、具体的にはベルリンを中心とするブランデンブルク・プロイセンとその西方領域たるマクデブルクにおけるフランス系改革派住民らの集団的記憶の変容やホスト社会との関係の変化、19世紀後半におけるそれらの意味を考察することができた。それにより、当該地域における多様性の歴史についてナショナリズムとコスモポリタニズムの両立という特殊な視点を提供することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
概要にも記したが、2019年度末以降の新型コロナ感染症の世界的拡大によりドイツとの往来が困難であり、新規に史料調査ができない状況にあるため。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の考察には、18世紀に入ってからの史料収集が必須である。しかしながら、現在の状況では新型コロナ感染症によりドイツとの往来が容易ではない。したがって当面は今年度に引き続き、ユグノー側が入植の記憶を歴史化した出版物を収集し、彼らのおかれていた状況を多角的に確認したい。さらに、本年度では不十分であったホスト社会側の状況や入植者たちへの意識を様々な記述史料から拾い集める作業にも注力していきたい。そうした作業の中で、課題をより明確にし、史料調査が可能になるときに備えたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の予算費目において大半を占めていたのは、史料調査のための渡航費および滞在費であった。しかしながら、新型コロナ感染症の世界的流行によって現時点では一度も渡独できていない。事態の改善がいつ見込めるのか予測がつかない一方で、研究期間を1年延ばした。報告者としては、最後まで渡独による史料調査を念頭に予算執行を行いたいと考えている。それゆえ、別品目への経費振替を極力避け今日に至っている。
|