研究課題/領域番号 |
19K01092
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小泉 龍人 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (80257237)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 実験考古学 / メソポタミア / 理化学的分析 / 焼成温度 / 彩文顔料成分 |
研究実績の概要 |
今年度、新型コロナ感染拡大の影響により、中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所(トルコ、カマン)での復元土器焼成実験を延期した。国内では、茨城県工業技術イノベーションセンター・笠間陶芸大学校と繊維高分子研究所に彩文土器片等の理化学的分析・再焼成実験とデジタルマイクロスコープ撮影を依頼した。 まずサラット・テペ(トルコ)のウバイド期から後期銅石器時代前半にかけての土器試料のうち未測定分について、蛍光X線分析により元素組成を分析し、粉末X線回折により鉱物組成を同定した。元素組成分析の結果、これまでに分析してきたサラット・テペの土器試料とほぼ同様の成分の割合を示すことがわかった。鉱物組成の同定においてもこれまでの試料とおおかた同様の組成を示すことを確認した。 また外面と芯の色調がわずかに異なる試料(H12-184-4)について、土器片断面の外面側と芯側を削り出して粉末X線回折を行った。その結果、芯側で認められた粘土由来鉱物(Calcite)が外面側で若干減少し、焼成由来鉱物(Pyroxene/Augite)が芯側よりも外面側で微増していることを確認した。同試料の芯まで十分に焼成されていなかったために、こうした差異が生じたものと推定される。 さらに別の土器試料(F12-114-3, G12-188-2)を950℃/1000℃で酸化雰囲気にて再焼成したところ、粘土由来鉱物(Calcite, Illite/Muscovite)が消滅あるいは減少し、焼成由来鉱物(Hematite)がわずかに生成した。とくにG12-188-2試料ではWollastoniteが生成されていることより、サラット・テペの土器試料の焼成温度は約950℃と推定されるというこれまでの研究成果を裏付ける事になった。くわえて土器試料数点をデジタルマイクロスコープ撮影し、断面の焼成状況についてデータベースを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染拡大により、本年度中に現地(トルコ、カマン)へ研究出張することが叶わず、復元土器焼成実験を延期したことが研究の遅延のおもな理由である。同時に、テル・マシュナカの土器資料について、数十点の資料を日本に移送して理化学的分析に着手する予定であったが、コペンハーゲン大学(デンマーク)に出張して管理者(インゴルフ・チューセン氏)と分析試料の実見・選別、意見交換等を行うことも叶わなかったため、研究が予定通りに進まなかった。他方、国内では計画通りにサラット・テペの未測定試料について理化学的分析を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナワクチンの接種を完了し、感染状況が落ち着いた場合、トルコへ出張してアナトリア考古学研究所での復元土器焼成実験を再開し、コペンハーゲン大学へ出向いて分析用試料の実見・選別等を実施する方策である。ただしワクチン接種の遅延や、新型コロナウイルス変異株の感染拡大等により再び現地渡航が難しくなった場合、健康維持を最優先として計画の再延長も視野に入れている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大の影響により、アナトリア考古学研究所(トルコ、カマン)およびコペンハーゲン大学(デンマーク)への研究出張がそれぞれ延期となり、旅費等を未使用であったため。
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