研究課題/領域番号 |
19K01092
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小泉 龍人 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (80257237)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 実験考古学 / メソポタミア / 理化学的分析 / 焼成温度 / 彩文顔料成分 |
研究実績の概要 |
今年度、新型コロナ感染拡大の影響により、中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所(トルコ、カマン)にて実施する予定でいた復元土器焼成実験を延期した。 国内では、茨城県産業技術イノベーションセンター(本所)にて、サラット・テペ(トルコ)のウバイド期から後期銅石器時代前半にかけての土器試料のうち彩文顔料が認められる7点の試料について顕微レーザラマン分光分析を試験的に依頼した。測定データについて“Crystal Sleuth”を使用して解析してもらったところ、マグネタイト(1点)およびヤコブサイト(3点)を同定した。この成果は、これまでの本科研費研究に関連した彩文顔料について得られていた見解とおおむね一致している。 同時に、サラット・テペ遺跡で出土したおもにウバイド期の土器資料を研究用にデータベース化する作業を実施した。各土器片の様式、器形、素地、口径、残存率、口縁形状、成形技法、胎土含有物、外面器面調整、内面器面調整、施文、焼成、色調などに関する観察所見を作業協力者にデータ入力してもらった。サラット・テペ遺跡H-12トレンチで出土した土器試料についてのデータベース化はほぼ終了した。 さらに、別原資にて、中性子誘起即発ガンマ線分析(PGA)を用いて、サラット・テペ遺跡及びテル・マシュナカ遺跡のメソポタミア彩文土器の非破壊重元素分析を行った。これまでの本科研費研究の成果とおおむね合致する成果を得ることができ、本科研費を使用して学会にて報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染拡大により、本年度中に現地(トルコ、カマン)へ研究出張することが叶わず、復元土器焼成実験を延期したことが研究の遅延のおもな理由である。同時に、テル・マシュナカ遺跡出土の土器資料について、数十点を日本に移送して理化学的分析に着手する予定であったが、コペンハーゲン大学(デンマーク)に出張して管理者(インゴルフ・チューセン氏)と分析試料の実見・選別、意見交換等を行うことも叶わなかったため、研究が予定通りに進まなかった。他方、国内では計画通りにサラット・テペ遺跡で出土したおもにウバイド期の土器資料について詳細なデータベース化の作業を実施した。同時に、ラマン分光分析の試行や別原資によるPGA分析の成果検証なども実施し、有益な所見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナワクチンの接種を完了し、感染状況が落ち着いた場合、トルコへ出張してアナトリア考古学研究所での復元土器焼成実験を再開し、コペンハーゲン大学へ出向いて分析用試料の実見・選別等を実施する方策である。ただしワクチン接種の遅延や、新型コロナウイルス変異株の感染拡大等により再び現地渡航が難しくなった場合、健康維持を最優先として計画の再延長も視野に入れる必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大の影響により、アナトリア考古学研究所(トルコ、カマン)およびコペンハーゲン大学(デンマーク)への研究出張がそれぞれ延期となり、旅費等を未使用であったため。
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