研究実績の概要 |
中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所(トルコ、カマン)で復元土器焼成実験を実施した。実験窯を改築し、調整粘土で彩文土器を成形・器面調整後、調整顔料を塗り焼成した。おもにヤナギ材を燃料として計32個体を約6時間焼成し、焼成室温度950℃を一定時間維持できた。作品の窯出し後、実験窯全体をiPad Proで3Dスキャニングし、支援者と共に作品の写真撮影・計測等を行った。成果として31個体の彩文吸着は良好であり、これまでの各種試料の分析成果と2019年度実験成果の有効性を裏づけることができた。一方、複数個体の底部が欠損し、オルトンコーンとテストピースによる焼成モニタリングが機能せず、いくつかの課題が残された。 国内では支援者に依頼し、茨城県産業技術イノベーションセンターにて、サラット・テペ遺跡(トルコ)とテル・マシュナカ遺跡(シリア)出土彩文土器彩文部の顕微レーザラマン測定を行った。同測定データの解析により彩文部の鉱物を同定した結果、黒色系彩文はマンガン含有量により3区分され、マンガンの少ない彩文はMagnetite、中程度の彩文は概ねJacobsite及びMagnetiteの両者またはいずれか、多い彩文はJacobsiteによる発色の可能性が高いと考えられた。また赤色系彩文はマンガン含有量が少なくHematiteによる発色と考えられた。さらに2重彩文土器の黒色彩文はJacobsite及びMagnetiteの2種類の鉱物で構成され、赤色彩文はHematiteのみの単一鉱物で構成されていたことがわかった。 別途、両遺跡の土器胎土についてJRR-3(茨城県東海村)にて中性子誘起即発ガンマ線分析(PGA)も試行し、同分析結果を本研究成果と比較検証したところ、土器胎土の微量重元素であるGadolinium, Samarium, Titaniumにおいて明確な差を認めることができた。
|