研究課題/領域番号 |
19K01093
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 陽 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (00771867)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パブリックアーケオロジー / 文化遺産研究 / 考古学 / 文化資源学 / 発掘調査 / 地域社会のアイデンティティ / ソンマ・ヴェスヴィアーナ / 「アウグストゥスの別荘」遺跡 |
研究実績の概要 |
本研究は、考古発掘調査が地域社会のアイデンティティ形成にどのような変化を及ぼすのかを検証するための方法論を構築することを目指す。東京大学を中心とした調査団がイタリアのソンマ・ヴェスヴィアーナ(以下「ソンマ」)の通称「アウグストゥスの別荘」遺跡で行っている発掘調査を事例とし、ソンマ住民による町の歴史・文化の語り方(発話)、記し方(文章)、表し方(非言語表現)の分析を通して、発掘調査が地元社会のアイデンティティ形成にどのような影響を与えるかを実証的に検証する。分析の対象となるのは、①ソンマ住民への質問票調査および発掘調査のステークホルダーへの面接調査を通して得た発話データ、②遺跡訪問者への質問票調査、町の広報誌、地元新聞、観光案内、文化サークルが運営するウェブサイト・SNSサイトの文章データ、③ソンマにおける行事開催に伴うポスター・チラシ、看板等の物質・視覚情報の非言語表現データである。 2019年度は、①のうちソンマ住民300名に対して行った質問票調査、②のうち遺跡訪問者685名に対して行った質問票調査から得られたデータを質的分析すると同時に、デジタルアーカイブ化することによって将来的に再検証可能な状態でデータ保管した。また③のうちのポスター・チラシ、看板等の物質・視覚情報を、データ収集の時間、場所、コンテクストがわかるように整理・分析し、同じくデジタルアーカイブ化した。 成果発信としては、2019年度が最終年度の科学研究費助成事業(基盤研究(C)一般16K03152)の成果を統合・継承しながら、学術雑誌『Amoenitas』第8号に掲載するための英語論文「Public archaeology at the so-called “Villa of Augustus” in Somma Vesuviana」を執筆した。同論文はアクセプト済みで、2020年9-10月に出版予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で実施する①ソンマ住民への質問票調査および発掘調査のステークホルダーへの面接調査を通して得た発話データ、②遺跡訪問者への質問票調査、町の広報誌、地元新聞、観光案内、文化サークルが運営するウェブサイト・SNSサイトの文章データ、③ソンマにおける行事開催に伴うポスター・チラシ、看板等の物質・視覚情報の非言語表現データ、の分析のいずれも当初計画通りに進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
イタリアならびに日本におけるコロナ禍の状況次第ではあるが、令和2年度はイタリア出張を行い、ソンマの町でのエスノグラフィー、また必要に応じて発掘調査のステークホルダーへの追加の面接調査を実施する予定である。訪問が不可能な場合には、オンラインミーティングツールを活用して面接調査を行うことも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた2020年3月のイタリア出張をコロナ禍のために中止したため。
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