研究課題/領域番号 |
19K01095
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 照彦 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10249906)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 流通・消費 / 須恵器 / 緑釉陶器 / 灰釉陶器 / 中国陶磁 / 青磁・白磁 / 文献史学 / 篠窯跡群 |
研究実績の概要 |
本研究は、古代から中世への変換点に位置する平安時代を中心として、物資流通の実態解明に重点目標を置き、須恵器・施釉陶器・中国陶磁などの焼物を中心に基礎研究を深めることにしている。 まず考古学的な分析として、上記の土器・陶磁器類については、重点地域を設定したうえで流通様相の解明を目指した。本年度は、国内においては宮城県の多賀城跡を対象に、出土の国産施釉陶器、中国陶磁ならびに篠窯産須恵器の実見調査を試みた。その結果、地区ごとの様相差や全般的な出土量の変遷、緑釉陶器と灰釉陶器ならびに中国陶磁器の比率などに関して、基礎的な状況の把握することができ、とりわけ地区によって施釉陶器の質の差が明確化した。また篠産須恵器に関しては、実見できた範囲では鉢類が多く、しかも10世紀後半以降の須恵器生産としては末期のものの量が多いことなどを確認した。 また、国外についても、中国の浙江省において寧波文物考古研究所などにおいて実見調査を試みるとともに、関連の研究者と種々の情報交換を行った。墓出土品には高級品を含む特殊品が少なくないのに対し、都市部の消費地で一般的に出土する陶磁器類に関しては、日本の様相と異なる点があるとしてもかなり共通する部分が大きいことも明らかになった。 また、浙江省周辺で生産された越窯青磁についても現地の窯跡の情報を得ることで、窯資料の多様な質の製品を確認し、日本出土品との異同について認識を深めた。さらに、他省では河北省においても近年の白磁に関する知見などの情報も得た。 この他に共同研究としては、研究協力者を招く形での研究会を開催した。具体的には、今年度は国産の灰釉陶器をテーマに掲げ、その研究を推進している若手研究者に最近の研究状況についての報告をお願いした。その後、関係研究者とともに意見交換を行った。このほか、理化学的な分析についても、いくつかの検討を行うべく準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定の国内や海外での重点的調査は、順調にこなすことができ、所期の目的をほぼ達することができた。また、研究協力者を求める形で、今回の研究体制では不足する分野についての補充を行う形で、研究会などを開催できた。これらのことからも、ほぼ順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの流行もあって、2020年度の前半に予定していた実見調査がひとまず延期となっており、今後の予定や調整ができていない。そのため、今後の実見調査の見通しはやや不透明な部分もあるが、まず国内では東北地方の事例に関して引き続き検討を進める予定にしている。また一方で、海外についても福建省を第一の候補にしつつも交渉を進めており、陝西省や河南省などでも実見調査が可能かについて調整を進めている。実見調査ができない部分に関しては、報告書などにより資料集成や分析などを行うことで、さしあたりの代替の処置にしたいと考えている。また、研究会に関しても、年度後半の開催を目指し、研究協力者との協議を深めたいと考えている。
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