本研究は日本の古代から中世への変容過程の解明を目指し、平安時代の考古学の側面から検討を加えた。研究対象として、日本産の須恵器や施釉陶器、中国産の陶磁器といった焼物類を主に取り上げ、それらの流通状況を解明することに重点目標を置き、基礎的な研究を深めた。出土資料の集成作業と、新たな年代観や産地同定法に基づいた検討の結果、上掲の焼物類の流通の実相について新たな知見を得ることができた。とりわけ、平安期の須恵器として著名な丹波の篠窯で生産された鉢については、10世紀末から11世紀初め頃の資料が最も多く出土することを確認でき、当該期が中世の流通の展開に先駆けた様相を示すことを指摘できた。
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