研究課題/領域番号 |
19K01101
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
田中 和彦 鶴見大学, 文学部, 准教授 (50407384)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 貝塚 / 黒色土器 / 土器編年 / 植物遺存体 / フローテーション / 貝サイズ |
研究実績の概要 |
2019年度の調査は、当初の計画通りにフィリピン共和国、ルソン島北部ラロ(Lal-lo)町に所在する新石器時代~金属器時代に形成されたカトゥガン(Catugan)貝塚遺跡の発掘調査をフィリピン国立博物館考古学部のA.ガロン(Garong)博士、フィリピン大学考古学研究プログラムのE.ディソン(Dizon)博士、琉球大学助教の山極海嗣氏(自費参加)、早稲田大学非常勤講師樋泉岳二氏(自費参加)とともに2020年2月後半から3月前半にかけて実施した。 当該貝塚は、良好な5枚の層を有する貝塚であるが、本年度は、第I層と第Ⅱ層の発掘調査を実施した。その結果、第Ⅱ層よりほぼ完形の黒色甕形土器及びC14年代測定のための試料となる炭化物を検出することができた。さらに、同じ第Ⅱ層において、浅い土壙に褐色土器を埋め込んだ遺構を検出し、平面図及び断面図を作成した。 発掘した堆積物は、フローテーション用のものを除き、近くのカガヤン川で篩を使って水洗し、残った物の中から土器片や自然礫等を採集した。また、発掘した土壌のうち、米袋一袋分をフローテーションによって処理し、植物遺存体を検出した。植物遺存体については、乾燥処理を行った段階であり、今後、同定作業を進める予定である。そして、樋泉岳二氏の示唆に基づき、層ごとの貝のサイズの違いの有無を明らかにするため、層ごとに完形貝を100点採集した。 日本に帰国後の2020年3月10日、早稲田大学において開催された東南アジア考古学会2019年度調査報告会において、調査成果を「ルソン島北部、ラロ貝塚群、カトゥガン貝塚の再発掘」(田中和彦とA.Garong博士、E.Dizon博士、山極海嗣氏、樋泉岳二氏の共同発表)というタイトルで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第Ⅱ層で検出した土器埋め込み遺構の土器が非常にもろかったため、慎重に発掘を進める必要があり、予定より多くの時間を必要としたため。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度に引き続き、ルソン島北部ラロ町のカトゥガン貝塚の第Ⅲ層~第V層の調査を2020年8月、2021年2月に予定していたが、フィリピン共和国は、新型コロナウィルス感染拡大により、外国人の入国を制限しており、現状では、2020年8月の調査は、困難であると考えられる。2021年2月の調査については、今後のコロナウィルスの感染状況を注視しつつ、フィリピン側の研究者と密に連絡を取った上で調査予定を検討し、実施可能な状況となれば実施したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、フローテーション用の器具を日本で購入してフィリピンに持っていく予定であったが、受注生産で器具の完成まで時間がかかるのと、2019年度が調査の最初の年度で、フローテーションの量も多くないと考えられたため、現地で材料を調達し、実施することにした。 2020年度の調査では、フローテーションの量も増えることが予想されるため、2021年2月の調査が実施可能となれば、2020年12月中には、フローテーションの用具を発注し、完成後、現地調査に持参し、使用する予定である。
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