本研究は、出土資料をもとに、北シリア、ユーフラテス川中流域のヘレニズム-ビザンツ時代の埋葬文化の特徴を明らかにすることを目的とした。資料は古代オリエント博物館が1974-80年にシリア現地の発掘調査で得た資料で、その大部分がシリア政府から日本に分与されている。資料の再調査・再検討を進める一方、墓に共通して多く出土する土製ランプとガラス製玉に焦点をあて、日本に保管されている利点を活かして科学分析も実施した。ランプの残存油脂の結果、5-6世紀の横穴墓では香り成分を含んだ植物性油脂を用いた土製ランプが一回限りで用いられていた可能性を指摘できた。成果は学会で発表するほか、展示という形で一般公開した。
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