研究課題/領域番号 |
19K01104
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
井出 浩正 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 室長 (20434235)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 縄文時代 / 縄文土器 / 異系統土器 / 阿玉台式土器 / 勝坂式土器 / 後沖式土器 / 斜行沈線文土器 / 社会交流 |
研究実績の概要 |
【研究実績の概要】 当該研究は、A:中期集落遺跡出土土器の集成とデジタルデータ化、B:CADによる3次元データ化と容量計測、B:資料調査 (実見観察)、C:民族学的手法による土器の交換および贈与と集間交流の調査の大きく3つの研究スケジュールから構成されている。 「現在までの進捗状況」において後述するが、2020年度は世界規模の新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによって、研究環境が激変したこともあり、研究そのものへの大きな影響と計画変更が余儀なくされる状況に至っている。 そうしたなか、2020年12月に研究代表者の研究論文(井出浩正2020「縄文時代中期における集団間交流の一様相―山梨県北杜市酒呑場遺跡出土土器を事例に―」『生産の考古学Ⅲ』)が刊行されたことは幸いであった。緊急事態宣言等、我が国が新型コロナウイルス(COVID-19)によって大きな影響を受ける中、出版側の事情による編集作業等の遅れもあったものの、刊行されたことは大きく評価できる。 当該論文は、2019年度における考古資料の実見観察と文献資料調査および分析によって得られた知見をもとにまとめたものである。当該論文では、山梨県の事例をもとに、縄文時代中期の勝坂式土器、斜行沈線文土器、阿玉台式土器の3つの土器の分析を通じて、相互の交流関係を明らかにすることができた。本研究課題のひとつに、縄文時代が一万年にわたり、なぜ長期に存続しえたかという大きな課題がある。当該論文では、こうした背景のひとつとして、多様な社会交流の実態を推測させる成果があるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
理由として、我が国における新型コロナウイルス(COVID-19)の感染の拡大とその予防のための緊急事態宣言等による行動抑制がある。 ひとつは研究代表者が所属する組織内の行動抑制の影響である。2019年末から局所的に発生した新型コロナウイルス(COVID-19)は、2020年2月頃から我が国にも大きな影響を与え続けている。研究代表者が所属する組織は東京都に所在し、これまで3回の緊急事態宣言が出されている。1回目は2020年4月7日から5月25日まで、2回目は2021年1月8日から2月7日まで、3回目は同年4月25日から5月31日(予定)までである。1回目の緊急事態宣言では、原則自宅待機となり外出の大きな抑制がかけられた。職場内のネットワークへのアクセスも制限された状態にあり、研究データの照会や、資料、書籍等の保管場所への利用ができない状況下にあった。1回目の解除以降は、徐々に環境が改善されつつあるが、原則5割以上(緊急事態宣言下は7割以上)の在宅勤務の下で、研究上の資料や書籍の利用は制限され続けている。 ふたつめに、国内外を問わず、東京都外への不要不急の移動制限と自粛の影響がある。 当該研究は国内においては考古資料の実見・観察と、パプアニューギニアにおいては実地調査が計画されている。しかしながら、2019年度においてはパプアニューギニアの治安上の問題から、2020年以降は新型コロナウイルス(COVID-19)による海外への渡航制限によって実施の目途が立っておらず、期間中の実施が極めて困難な状況にある。 一方、国内においても、日本国政府ならびに東京都の方針を受け、現在まで東京都外への不要不急の移動自粛が余儀なくされている。対象となる考古資料は地方自治体が管理・所蔵する場合がほとんどであり、現時点で、そうした地域への積極的な資料調査を避けるべき、控えるべき状況にあるといわざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
【今後の研究の推進方策】 当該研究は、A:中期集落遺跡出土土器の集成とデジタルデータ化、B:CADによる3次元データ化と容量計測、B:資料調査 (実見観察)、C:民族学的手法による土器の交換および贈与と集間交流の調査の大きく3つの研究スケジュールから構成される。 Aでは、引き続き、研究代表者が所属する組織内に設置された施設内で、対象地域の発掘調報告書等の悉皆的な検索を行う予定である。Bでは、Aで得られた知見をもとに、CADを用いた容量計測を行う。すでに計測したデータの整理とともに、データベース化を進めたい。Cでは、新型コロナウイルス(COVID-19)によって海外渡航の目途が立っていない。そのため、日本国内にあるパプアニューギニア関連資料の実見観察や見学、民族事例が掲載された文献調査等、渡航調査の代替的な研究を行う。特に、研究代表者が過去に参加した早稲田大学のパプアニューギニアにおける民族調査について、現在、同大学でその総括的な成果をまとめるべく、調査報告書を作成している。研究代表者も分担執筆、編集作業等に参画しており、研究課題に関連する上記の代替的な研究を行いたい。 【課題】 AからC、いずれも、我が国における新型コロナウイルス(COVID-19)の感染の拡大とその予防のための行動抑制によって大きく影響を受けている。Aにおいては、文献調査とともに考古資料の実見観察が重要であるが、対象となる考古資料は地方自治体が管理・所蔵する場合がほとんどであり、現時点で、そうした地域への積極的な資料調査を避けるべき、控えるべき状況にあるといわざるを得ない。同様に、大学図書館等への文献調査は大学側が許可しておらず、補足的な文献調査が行えない状況にある。Cにおいては、パプアニューギニアを含む、海外への渡航制限によって実施の目途が立っておらず、当該研究期間中の実施が極めて困難な状況にある。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】我が国における新型コロナウイルス(COVID-19)の感染の拡大とその予防のための緊急事態宣言等による行動抑制の影響のためである。当該研究は国内においては考古資料の実見・観察と、パプアニューギニアにおいては実地調査が計画されている。しかしながら、2019年度においてはパプアニューギニアの治安上の問題から、2020年以降は新型コロナウイルス(COVID-19)による海外への渡航制限によって実施の目途が立っておらず、期間中の実施が極めて困難な状況にある。一方、国内においても、日本国政府ならびに東京都の方針を受け、現在まで東京都外への不要不急の移動自粛が余儀なくされている。対象となる考古資料は地方自治体が管理・所蔵する場合がほとんどであり、現時点で、そうした地域への積極的な資料調査を避けるべき、控えるべき状況にあるといわざるを得ない。そのため、上記で予定していた研究およびそのための諸経費が余剰となり、次年度使用額が生じた。 【使用計画】新型コロナウイルスの感染状況とその影響によるところが大きいが、慎重な判断をしたうえで、国内の資料調査の再開と、パプアニューギニアへの海外調査においては、その代替え的な研究(国内のパプアニューギニア関連資料の実見観察、見学、文献等の購入費)などに使用したいと考えている。
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